・もっとも大幅に伸びている区間 ・その次に大幅に伸びている区間 ・その次に伸びている区間
(約5000字)
[2540]に関して、訂正がございます。まず、[2540]は何の話だったかといいますと…
・[2540]
> 拠点都市間の移動(環状/ネットワーク型の流動)が増えている、その需要に鉄道が対応しきれておらず、このままでは自動車(マイカー)依存社会になってしまう、という指摘がなされています。
> この資料で「近未来」としているのは、2020年あたりのこと。あと15年しかありません。
…もう6年をきりました。カレンダーが残り数枚になったような焦りを、みなさん感じられていますでしょうか? それとも、期限のほうが「逃げ水」のごとく、2050年にスライドしていってしまうのでしょうか。
[2540]よりも後に行なわれた最新のパーソントリップ調査の結果が、2012年に公開されていましたので紹介します。
・東京都市圏交通計画協議会「第5回パーソントリップ調査を踏まえた検討結果」(2012/1)
http://www.tokyo-pt.jp/publicity/index.html
http://www.tokyo-pt.jp/publicity/file/pt_120201.pdf
調査自体は2008年に行なわれたものです。東日本大震災後の状況は、2018年に行なわれる次回調査までわからないままです。この調査の上では、何ごともなかったかのような結果になるのでしょうか、それとも大きな変化が起きているのでしょうか。それがわからないままでは、いろいろな計画を「決められない」という形で、東日本大震災の影響が続きそうですね。
あるいは、SuicaなどのICカードによる出改札のデータを使って、従来のパーソントリップ調査よりはるかに正確かつ網羅的に集計できているのかもしれません(Suicaのペンギンがドドドドド[2920])。その結果が一般にも公表されるとよいのですが、難しいでしょうか。難しいですね。
> 鉄道ネットワークは高度に発達しているが、現在も運輸政策審議会答申第18 号で平成27年までに開業することが適当であると位置づけられた路線を中心に整備が進められており、平成22年にはその約8割(218km)が営業中となっている。
現在、相鉄・JR直通線(2018年度開通予定)と相鉄・東急直通線(2019年度開通予定)の工事が続いています。答申にあった「2015年度」という目標を、いずれも超過することになりますが、いまさら中止になることはないでしょうから、少し気は早いですが、もうできたも同然という感じでいます。
※たまに、いまが何年なのか、時間の感覚を失うことがあります。危ない兆候ですね。15年くらい待ちますとも。
> 地域間でみると、東京区部とその周辺の東京多摩部、埼玉南部、千葉西北部との間のトリップ数が多く、過去10年では、神奈川と東京区部の間、埼玉北部と埼玉南部の間など東京区部から離れた地域と都区部の方向との間の交通が増加した。
> 平成20年と平成42年(20年後)を比較すると、東京区部と横浜市との間でトリップ数が増加する見通しである。それ以外は平成20年と大きくは変わらず、東京区部を中心に、埼玉南部、横浜市、東京多摩部、千葉西北部間のトリップが多い。
[2540]では、リンク先の図4の地図を読み間違えていました。埼玉県が、埼玉北部と埼玉南部、さいたま市の3つに区分されている(政令指定都市を単独で区切ってある)地図になっていました。つまり、栃木までは含まれていませんでした。
※とんだ早とちりをば。申し訳ありません。
・JR East Technical Review「近未来社会における都市・移動に関する調査・研究」(再掲)
http://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_4/54-57.pdf
「図4:地域間のトリップ数の伸び(S63〜H10)」から読み取れる、トリップ数が伸びている区間について、以下のように訂正します。
☆もっとも大幅に伸びている区間・埼玉北部⇔東京多摩部
・埼玉南部⇔千葉西北部
・千葉西北部⇔千葉東部
・茨城南部⇔千葉東部
☆その次に大幅に伸びている区間・東京多摩部⇔横浜市
・茨城南部⇔千葉西北部
☆その次に伸びている区間・埼玉南部⇔東京多摩部
・東京多摩部⇔神奈川
・横浜市⇔神奈川
・千葉市⇔千葉西北部
・千葉市⇔千葉東部
・千葉市⇔千葉西南部
この調査の範囲では、北関東(栃木・群馬)からのトリップ数がまったくわからず、大宮駅=さいたま市や、茨城県内の乗換駅を起点として集計したわけでもないでしょうから(この調査は鉄道路線ごとの流動でなく、ある個人の出発地から最終目的地までの移動を調べるものです)、宇都宮線や東武伊勢崎線に関してはかなりの流動が無視された状態になっているはずです。
※報告書に入れていなくてもデータ自体はとってあるのか、どうなのでしょう。調査票をもらったのに、栃木だ群馬だといったら集計もされずに捨てられる、では印象が悪すぎます。
・東京都市圏交通計画協議会「パーソントリップ調査とは」
http://www.tokyo-pt.jp/person/
> パーソントリップ調査は、「どのような人が」「どのような目的で」「どこからどこへ」「どのような交通手段で」移動したかなどを調べるものです。
> ある人の平日の1日の動きを調査しています。
1都4県のいわゆる「首都圏」(東京50km圏)に比べて、東京70km圏との間の流動が桁違いに少ないのであれば問題ないですが、人口減少で全体の流動が減ってくると、差が縮まって無視できなくなってくると思います。
全部が全部、JRの路線網によって対処すべき需要増というわけでもないですが、以下の区間についてはおぼろげながら対応が浮かんできます。
・埼玉北部⇔東京多摩部:むさしの号を高崎線に直通させる?
・埼玉南部⇔千葉西北部:しもうさ号の増発?
いずれも武蔵野線を活用しての増発が、「直通」と「増発」を同時に実現できる、もっともシンプルな対応だと思います([2910])。
・茨城南部⇔千葉東部:成田線・鹿島線の増発? 鹿島線・鹿島臨海鉄道線の速達化?(特急形蓄電池駆動電車を投入?)
[2910]でも触れましたが、ダイヤ上、成田線・鹿島線・総武本線はたいへん古い状態です。他方で、線路はそれなりによく、おそらくは、車両の置き換えなどとトータルで、高速バスに対抗するような速達・着席・直通型のサービス(※)を考えるのだろうと思います。
※成田−水戸間を2両編成の特急が走ってもいいではないですか、ワンマン運転できるなら。チケットレス乗車など、既設の駅や乗務員に特別な対応が必要とならない態勢を構築することが前提となりますが、高速バスでは割とあたりまえのようにできている話かと思います。鉄道でもできるでしょう。
※このあたり(千葉と茨城)を移動するのに、成田空港で高速バスを乗り継いだり、あるいはマイカー、となってしまうのは、鉄道がないならともかく、あるのにあてにできないという状態ですから、たいへん残念な状態にあるといえます。公共交通ならノートパソコンを開いて仕事しながら移動できる(あるいは仮眠できる)のに、とぼやきつつマイカーを運転されている方も、少なくないでしょう。現状は必ずしも、誰もが望んだ状態では決してないのです。旅客需要がきちんと鉄道に向かい、鉄道が適切な輸送力を発揮できるよう、例えば高速バスの路線認可を抑制的にする、高速バスと鉄道のチケットを同一のシステムや売り場で発売する(比較しやすくして、鉄道も選ばれやすくする)ことを促すといった政策も、これからは考えられてもよいのかもしれません。「そして誰もいなくなった」となることだけは避けなくてはなりません。
いわゆる「東西軸」の関連施策として、総武線(快速)の千葉止まりを佐倉や成田空港まで伸ばすことも十分に考えられます。それとセットで、成田での乗り換えを前提とし、成田から各方面への接続をうまくとるような形での運行系統の分断と再編が行なわれることも考えられるのではないでしょうか。さすがに、成田での乗り換えを前提としないまま、各方面との直通を行なうのは難しいだろうと思います。
というのも、千葉−成田間の輸送力(線路容量)を、ほぼすべて成田空港のために割り振る必要が出るくらいに空港アクセスの需要が増えるとすると、需要が極端に異なる鹿島線の千葉乗り入れは、打ち切られて当然だからです。中央本線の中電の新宿乗り入れや、八高線の立川乗り入れが廃止されたのと事情は同じといえます。なお、列車の分割・併合も、極力なくす(少なくとも、増やさない)方向にあるようですから、「成田空港・鹿島神宮」という複数行先の列車も、早晩、廃止されるのではないでしょうか。
・東京多摩部⇔横浜市:横浜線の速達化(特快の新設、速度引き上げ)や増発?
・茨城南部⇔千葉西北部:常磐線〜武蔵野線〜京葉線の直通? 東武野田線の速達化(急行の新設)?
このあたりは誰でも容易に想像がつくところで、各事業者としても、比較的容易に取り組んでいける話ではないかと思いますので、詳細は割愛します。
・千葉西北部⇔千葉東部:
一瞬、えっ、と思います。船橋−成田間の京成でのトリップ数が伸びている、ということかと思ったら、八街市、富里町(現在は市)、成田市までは千葉西北部に含まれますので違います。なんと、千葉東部は、香取市から茂原市、鴨川市、南房総市まで、沿岸の自治体を「まるっと」含んでいました。統計上のカラクリです。例えば、浦安市から習志野市の臨海地域や内陸の東葛地域と、茂原市や大網白里町(現在は市)、東金市など(郊外、いわゆる「チバリーヒルズ」のさらに外縁部となるベッドタウン)の間の需要が大幅に増えた(臨海地域の大きな工場、東葛地域の大学への通学といった、都心までは出ないトリップ、あるいは、いわゆる「夢の国」へのトリップと、逆に東葛地域などから郊外の大学やゴルフ場などへのトリップが増えた)、あるいは、成田空港や周辺の工業団地へ、香取市などからの通勤が増えたといったことがあれば、この区間のトリップ数が増えたとなるわけですね。(ちょっと混乱します。)
・ウィキペディア「ワンハンドレッドヒルズ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%92%E3%83%AB%E3%82%BA
※10〜11月の平日で、調査の行なわれた日が、たまたま学校の代休であったり、「秋休み」や「県民の日」の類であったりすると、極端な結果が出かねません。通常、そういうノイズは除去されますが、それを含めて不作為(ランダムサンプリング)を貫くという考え方もあり、この調査ではどうしたのかは、ちょっとわかりません。また、回答してくれる人と、してくれない人、というバイアスもあります。「夢の国」に詣でる遊びのグループに声をかければ全員が揃って回答して、いわば票数が一気に増えそうです。調査員(たぶんアルバイト)には、サンプルが偏らないよう配慮することが指導されるはずですが、早くノルマを達成して帰りたいという気持ちもあるでしょう。調査には、人間的な意味で、いろいろな制約や限界があります。
・千葉市⇔千葉東部
同じく、南房総市や鴨川市と千葉市との間の需要は、この区間に含まれます。(かなり混乱します。)この区間を普通列車で乗り通す人はきわめて少ないと思われますので、特急や快速(のグリーン車)をどのくらい、という話ですね。
|