・初の「線区別ホスト」更新 ・おもてなし ・「上野東京ライン」でごわす(※) ・「着席サービス」 ・新線構想 ・ATOS線区の拡大 ・工事 ・車両 ・鉄道のスマート化 ・ホームドア ・24時間化・オフピーク ・システムトラブルなど ・国際情勢 ・自然災害・事故など ・リニア ・新線・新駅 ・基礎研究 ・メーカー・業界の動向など ・情報公開・広報・IRなど ・インターネット
(約8000字)
いま、久々に十大ニュースをまとめることができますことは、たいへん大きなヨロコビであります。
・[2553] 2005年の十大ニュース
・[2881] 2008年の十大ニュース
これまで十大ニュースをまとめたのは2005年(※1)と2008年だけで、毎年まとめられるほど次々に大きなニュースがあるわけでもございません。このフォーラムでは無理をせず、直近5年と今後5年を含む10年ほどの期間(※2)においてインパクトのあるニュースということでまとめます。
※1 初めて「十大ニュース」をまとめられる程度に情勢を俯瞰できるようになるにも7年かかったということにほかなりません。
※2 だからといって、次に「十大ニュース」をまとめるのが10年後とは限りません。適宜、アップデートしていければと思って(は)います。
まず、ATOSとの関連が深い十大ニュースです。
●初の「線区別ホスト」更新・[2919],[2920] 3月末:中央線(快速)の線区別ホストが更新
ATOSの導入が一巡し、初めて既設の線区別ホスト(線区中央装置)の更新が行なわれました。その後、山手線・京浜東北線・根岸線の線区別ホストの更新も進んだとみられます。これまでの導入順序をなぞりつつ、新たな線区や末端の区間を取り込んでいく形での更新は、まさにヤドカリの脱皮のよう、と形容できましょう。
●おもてなし・[2938] 東京メトロのおもてなし施策発表
・[2942] 7月〜:武蔵小杉・西船橋などでATOS連動とみられる英語アナウンス
2020年に東京で開催が予定されている国際的なスポーツイベントにあわせずとも間に合うよう、無料Wi-Fi(無線LAN)スポットの整備、旅客案内の多言語対応など、さまざまな施策が打ち出されてきています。外客誘致法も後押しになるとみられ、JRではATOSと連動した詳細な英語アナウンスの全面的な導入を検討しているのではないかとみられます([2944],[2957])。このフォーラムでは今後も、文字および音声の両方における多言語対応について、いろいろな観点で取り上げる予定です。
●「上野東京ライン」でごわす(※)・[2971],[2981] 来年3月:「上野東京ライン」運転開始へ
これまで建設が進められてきた東北縦貫線([2497])が7月に完成し、「上野東京ライン」([2971],[2981])として宇都宮線・高崎線と東海道線の相互直通運転が開始されることが正式に発表されましたでごわす(※)。試運転に185系が充当されたことから「マイ憶測」が呼ばれました([2967])でごわす(※)。
※新聞の全面広告には、いろいろな意味でインパクトがあったでごわす(※)。
●「着席サービス」・[2969] 3月:「スワローあかぎ」新設
・[2998] 12月:来年3月から「座席未指定券」発売へ/成田エクスプレスに実質の自由席
「エル特急」、「新特急」の呼称廃止以来の新たな動きです。いずれはライナー、特急列車自由席、普通列車グリーン車を統合した新しい「着席サービス」が実現していくことに期待しつつ、その過渡期における案内や料金制度のわかりにくさ、グローバル市場向け標準車両のインテリア([2988])、鉄道車両の車載システムならではの難しさ([2969])などに焦点を当てました。
●新線構想・[2913] 8月:羽田空港アクセス線構想が明らかに
相鉄・JR直通線の開業時期が3年延期になる一方、「羽田空港アクセス線」構想は、りんかい線、京葉線のATOSとも関連([2975])し、貨物線の旅客化も改めて広く注目されました。来年1月には、向こう15年の新線建設を方向付ける「次期答申」がまとまるものとみられます。
●ATOS線区の拡大・[2904],[2950] 8月〜:横浜線でATOS導入に向けたとみられる準備進む
相模線、八高線なども含めた現状を整理するとともに、東神奈川や八王子の駅装置などについて(資料が乏しく推測ばかりになって恐縮ですが)まとめました([2927],[2928])。
●工事 稲城長沼の2面4線化、北朝霞のホーム延伸([2911])、千葉駅の建て替え([2940]ほか)などの工事が進められたほか、青梅の2面3線化が着工されました([2962])。いずれもダイヤと密接に関連する工事といえます。これらの工事を契機に、このフォーラムではこれまであまり着目してこなかった旅客流動(ホーム上での降車客の滞留など)に焦点を当て、「増発したくてもできない」「直通したくてもできない」という状況がありうるのだということをご紹介しました。
●車両 横浜線、南武線にE233系車両が導入されるなど、着実な刷新が続いています。残る武蔵野線の動向が注目されます。このフォーラムでは、最近の新型車両であたりまえのものとなったデジタル列車無線を使用した通告伝達システムについて、出発時機表示器と比較し、まとめました([2907])。
●鉄道のスマート化 山手線の新型車両「E235系」の開発が発表されるとともに、デジタルサイネージ、駅構内LAN、東京駅構内のナビゲーション、「JR東日本アプリ」などとあわせ、トータルな「スマート化」(情報化、快適化、最適化、個人化)の一端が見えてきた1年でした。
●ホームドア・JR東日本「京浜東北線大井町駅へのホームドア導入の検討について」(2014/11/27)
http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141119.pdf
・JR東日本「昇降式ホーム柵の試行導入について」(2014/12/16)
http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141217.pdf
このフォーラムではまだきちんと取り上げることができていませんが、山手線でのホームドア(可動式ホーム柵)整備が概ね完了するとともに、初めて山手線以外でのホームドア設置に向けた動きが出てきました。拝島では「昇降式ホーム柵」が試行導入されると発表されました。ホームドア(可動式ホーム柵)の導入には、「半自動ドア」に類する新たなインタラクション、自動運転やワンマン運転の導入、線路方向の可変サインや広告との統合など、さまざまな観点で新しい課題や可能性があり、今後、注目していければと思っています。
その他、このフォーラムのテーマに広い意味で関連する十大ニュースについても、まとめます。これまでフォーラムで取り上げていないニュースについては、ここで簡潔にご紹介します。
●24時間化・オフピーク・都知事が交代:「都営交通の24時間化」事実上中止へ、課題整理されぬまま
・[2997] 1月:「午後12時まで」のシンデレラ・エクスプレス
いわゆる「九段下の壁」に象徴される東京メトロと都営地下鉄の経営統合を視野に入れた意欲的な取り組みもそこそこに都知事が交代となり、前知事(※)が進めていた「都営バスの深夜運行」の社会実験が予算上の期限を待たずに中止されました。1月には、沿線火災で新幹線の運行が大幅に乱れましたが、新幹線の運行(営業運転)が「午前6時から」とされていることはほとんど問題視されませんでした。このフォーラムでは今後も、時流や世相としてでなく、本質的な問題に迫っていきたいと思っています。
※かばんですって? それはなんのことでしょう。「お忘れ物承り所」([2959])へ行かれてはいかがでしょう。ガラスの靴? それもきっと届けられているはずです。
●システムトラブルなど・[2984] 10月:EB装置に関する不具合が16年越しに発見される
ハードウェアの共通化やソフトウェア定義化によって、機器やシステムのトラブルの影響が広範囲に及びかねないという脆さについて、鉄道もその例外ではないことを改めて実感させられました。
●国際情勢・WTO政府調達協定:東京メトロでのCBTC採用が視野に
http://atos.neorail.jp/atos3/news/news_140522.html
・JR東日本「世界貿易機関(WTO)政府調達協定の対象からの除外にあたって」(2014/10/28)
http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141020.pdf
・JR東日本「八戸線用気動車の公募調達の実施について」(2014/11/28)
http://www.jreast.co.jp/press/2014/20141123.pdf
その後の動きとしては、八戸線用気動車が公募調達となる一方、船橋駅南口ビルは入札も行なわれないなど、いろいろな思惑が渦巻いているような印象がございます。視点を国内に置きますと、安全性や国内の研究開発力が削がれないことも重要でありつつ、低コストでグローバル市場から調達できることも重要であります。家庭用ビデオや「次世代DVD」の覇権争い(で勝ったの負けたの)という前例もあり、難しくも注目していきたいと思わせられる静かに熱い何か的なものがあるように感じます。
●自然災害・事故など・2月:首都圏で大雪。東急で追突事故、ホーム上屋が崩落
・2月:川崎駅で回送電車が横転
・6月:小田急で回送電車が車両基地内で脱線
・9月:御嶽山が噴火、火山灰対策が関東でも現実的課題に
・10月:台風19号、JR西日本は全面運休
2014年は、近年になく「(どうしてこんな事故がいまさら起きるのかと)気になる事故」の多い1年だったといえるかもしれません。事故が起こるべくして起きている(予兆を見逃すような態勢になっていた、事故後も事業者が自力では原因究明できず鉄道総研な案件になるなど)ということを痛感させられます。また、大雪に備えて除雪車を増備することが、万一の場合には火山灰の除去にも使える、鉄道を運休することで人々の外出を抑制する、といった私的(わたしてき)にウロコな話がいくつもあり、たいへん興味を持ちました。
・日本経済新聞「東急東横線で追突、後続電車が脱線 元住吉駅 18人軽傷」(2014/2/15)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK15008_V10C14A2000000/
・日本経済新聞「オーバーラン、事故前に頻発 東急東横線の電車衝突事故」(2014/2/17)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1703G_X10C14A2CC1000/
> 東急東横線元住吉駅(川崎市)の電車衝突事故で、事故の2時間前から別の駅で通常の10倍近い距離のオーバーランが頻発していたことが17日、東急電鉄への取材でわかった。同社は事故発生当日の午前中から、雪が付着して止まりにくくなるのを防ぐ「耐雪ブレーキ」を使って走行しており、十分に機能しなかった可能性がある。
> 同社によると、14日は11件のオーバーランが発生。午前中は2メートルのオーバーラン1件だった。気象庁が横浜市内で14センチの積雪を観測した午後6時台は妙蓮寺駅で停止位置を10メートル超過。20センチ以上の積雪に達した午後10時〜11時台は、大倉山駅などで18〜25メートルのオーバーランが4件続いた。
> 国交省によると、鉄道会社の多くは降水量や風速に応じて徐行運転をする社内ルールを定めているが、雪に関しては明確な判断基準がないという。東急も徐行運転は指示していなかった。
「明確な判断基準がない」と何もできないというのはお粗末ではありますが、そういうものでもあります(勝手な判断をすることは、もっといけないことです)。風速にしても風向角は考慮されていない([2989])など、まだまだ「原始時代」なのではないでしょうか。
・神奈川新聞(カナロコ)「脱線事故で中断の整備工事、再開へ JR川崎駅」(2014/5/28)
http://www.kanaloco.jp/article/72060/cms_id/83185
・神奈川新聞(カナロコ)「小田急線脱線、始発から一部運休で通勤客ら足止め」(2014/6/20)
http://www.kanaloco.jp/article/73296/cms_id/87222
事故が3件とも神奈川県内で起きたことは、ただの偶然でしょう。2012年の京浜急行のがけ崩れも入れますと4件ですが、それでも偶然でしょう。もし偶然でないとすれば、それは気象条件によるもの(東京湾を挟んで東にある千葉や、内陸の埼玉では起きにくい)といえます。本当でしょうか。
・神戸新聞「台風19号で予告運休、JR西の対応に賛否 私鉄は通常運行」(2014/10/14)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201410/0007416924.shtml
> JR西は12日午後1時すぎ、13日午後4時からの運休を発表した。同社は「台風の進路や規模から、風雨が規制値を超える可能性が高く、安全を第一に考えた。事前の早い段階でお知らせすることで、外出計画の変更を考えてもらうことも期待した」と説明する。
きちんと検討して新しい手法を導入して行けるほどの体力(研究開発上の)は、事実上、JRにしかないといえます。そんな中、では実際に新しいことを試すと、ホウボウからガクガクとシカジカされてしまい、今まで通りに「原始時代」をやっている私鉄のほうがかえって人々にモチモチとヨイショされてしまうということになるのです。ソコハカとなく無力感すら覚えます、といっては「過言」でしょうか。
奥ゆかしい旅客流動の話や明石歩道橋事故の話とも関連します。渋谷では、年越しのカウントダウンイベントに人が集まりすぎるので、歩道の通行を大幅に制限するとのこと。東京駅での記念Suicaの販売中止騒ぎでは、何が足りなかったのでしょうか。赤レンガ駅舎のプロジェクション・マッピングの上映中止騒ぎからは、何を教訓にしたのでしょうか。担当部署が違っても、各々においてよく考えてください。
・NHK「渋谷駅前 元日にかけ通行制限」(2014/12/31)
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20141231/4367651.html
> 31日夜10時ごろから元日の午前2時ごろまで、駅前のスクランブル交差点のほかハチ公前広場や道玄坂下周辺などは、近くの飲食店に向かう場合などを除き、通れなくなります。
> これに伴って、午後11時ごろから、地下鉄の駅構内と地上をつなぐ交差点周辺の6つの出入り口や、JRのハチ公口の改札口が閉鎖されるほか、京王井の頭線に通じる渋谷マークシティのエスカレーターも停止されます。
> 警視庁は数百人の警察官を配置して警戒に当たることにしています。
●リニア・JR東海のリニア中央新幹線が着工:試験線を延伸、有料試乗も開始へ
・読売新聞「JR東海、リニア新幹線着工…27年開業目指す」(2014/12/17)
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141217-OYT1T50166.html
> JR東海は17日、2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の建設工事を開始し、最高時速500キロ・メートルで東京(品川)―名古屋間286キロ・メートルを結ぶ巨大事業が本格的に動き出した。
> ルートの86%はトンネル
> 年明けから用地取得を沿線自治体に委託し、地権者約5000人と本格交渉に入る。住民説明会は10月の工事実施計画の認可後、120回以上開いたが、河川の水量低下や大量の残土など環境への懸念が相次いだ。
馬車を286台つなげるような、といいましょうか、ハイビジョンの装置を8個つなげれば「8K」だ、という類の実に単純な「馬力のようなもの(そして鼻息が荒い)」しか感じないのは私だけでしょうか。いくら大きな工事といっても、環境アセスメントは工区ごとに分割されて行なわれ、費用もJR東海の自己負担でとなると、まさしく「普通の工事」が淡々と進んでいくかのような錯覚があります。残土も、どうにでもなるでしょう。
…と、頭では理解できつつも、実感がわきません。本当にそれでうまくいくのでしょうか。工事中に深刻な地質上の問題が明らかになったとしても、代替ルートでトンネルを掘り直すわけにもいかず。いくら自己負担といえども、民間で行なえる工事や事業の規模に「上限」がないというのは、法制度として大丈夫なのでしょうか。バブル期に構想された、富士山より高い超巨大ビル(800階建て:4000メートル)などを連想します。
・Wikipedia「X-Seed 4000」
http://ja.wikipedia.org/wiki/X-Seed_4000
> 建設地は東京湾上が想定され、工費150兆円工期30年が見積もられている。
見積もりのおそろしさ([2963],[2965])、ここに極まれり。ビルをモジュール化して積み上げたら800階建てができるという発想と、リニアも第1工区から、というのは似たもので、既存技術でできる範囲ごとに分割して積算すれば、見積もりだけは自動的に出てくるものですが…それでもねぇ、という不安でございます。ハイビジョンを286台つなげて「286K」といったら、間違いなく熱暴走しそうです。あなおそろしや。
●新線・新駅・[2941],[2956] 相鉄・JR直通線および相鉄・東急直通線
・[2992] 東海道線の村岡新駅
相鉄・JR直通線の開業時期が3年も延期になった背景として、もしかするとありうるかもしれないと考えられること[2955]や、保安装置(ATSやATC)についてまとめました。
●基礎研究・[2937] 10月:青色LED開発の3氏にノーベル物理学賞
●メーカー・業界の動向など・[2933],[2934],[2935] MIHARA試験センター
「高度先進鉄道アプリケーション」をキーワードに、国際規格への準拠、実験設備の共同利用などについて最新の動向をご紹介しました。
●情報公開・広報・IRなど 「東京総合指令室」(交通新聞社新書)が刊行され([2947])たのを契機に、JR北海道の話([2949])などをご紹介しました。
●インターネット・[2994] 〜12月:東京メトロ、オープンデータ活用アプリのコンテスト
・[2991] FORUM×ATOS、ソーシャル標準に対応
|