フォーラム - neorail.jp R16
発行:2015/10/27
更新:2021/11/3

[3118]

【博物館法SP(仮)】

Re:[3031] 「地中障害物」・PRと産業文化


(約15000字)

 [3031]の補足です。

[3031]
 > いわゆる「工場跡地」からいろいろなものが出てくる一因でもあります。同じ会社(継承した会社を含む)が同じ土地を使っている限り、(埋めるものが外部から持ち込まれた「ごみ」でない限り)地中に埋めておくことは問題視されません。土地ごと処分するとなって初めて、更地にしつつ、「いらぬもの」(有害物質や不発弾など)が埋まっていないか確かめることとなります。さらに、めでたく土地が売却され、新しく何かを建設する段階になれば改めて、今度は逆に「何かいいもの」(埋蔵文化財)が埋まっていないか確かめることとなります。

 「そのまま埋めてよい」という検索語で訪れたかたがいらして、いえ、「問題視されない」のと「埋めてよい」とではかなり違います。ちょっと不安になり、素人(※)ながら調べてみました。恐縮です。

※「そのまま埋めてよい」のかたも実務ではなく一般の関心から検索されたと見受けられます。

・(参考)山田毅「土壌汚染 不動産業者ができる調査・契約手法」
 http://nsk-network.co.jp/dozyouosen.htm

 > 不動産売買に絡んだ最近の事件
 > 産業廃棄物は1970年頃埋められたが当時は産業廃棄物の基準も無く誰が捨てたか特定できなかった。

 > 登記簿
 > 住宅地図等
 > 航空写真
 > ヒヤリング
 > 時系列で聴き取る。
 > 所有者などさらに地域の事情に詳しい地元精通者からヒヤリングする。
 > (「不動産取引のための土壌汚染対策マニュアル」新日鉄都市開発編を参照)

 > 同一の土地でも工場立地前には違う用途であったり、別の会社の工場であったりする例がある。そのため、現在だけでなく、過去の土地の使用履歴についても調べることが、汚染が後から発見され工事に支障が出ることを防止するうえで重要。
 > 工場を取り壊し新しい工場を建てた(スクラップ&ビルド)履歴があった場合には特に注意が必要で、過去の工場であった地盤以上に建屋や設備の残がい、地盤以下に埋めたものや染み込んだものがそのまま残っている場合もあり、これに対応した調査をしておかないと、現在の表層には何もないので一気に掘削したら、2m先から汚染物が出て工事が継続できなくなったという事例も多々ある。

 > 現地調査
 > 現地に下記のものがあるとき
 > 不自然な盛土、埋立地、放置物、焼却施設、油漏れ、臭気、表土の変色、植物の枯れ死、不自然な窪地、野積みドラム缶、焼却灰の処理後、排水汚水ピット、外部への排水、人工池、排水溝、井戸の配置、地下タンク、危険物貯蔵保管庫、化学物質の取り扱い、保管庫床面積処理等

 1970年ごろを境に、法令上「特に定めのない」という状態=いわば「原始時代」([2947])を脱するべく、法整備が進められたというわけです。

 そして、いま、さすが実務だなぁ、と感嘆されます。自分の身に責任がふりかかりますから、調査が徹底してます。また、そのための標準的な手法をまとめた一種「教科書」によって、有資格者(ただし「大昔」に資格を取得した者を含む)がさらに勉強できるよう、環境が整えられていることがわかります。頼もしいですね。

 さて、実務は実務者に「コミコミ」で「まるっと一任」する立場にある一般の読者としては、新聞記事や、事業者のプレスリリースを正確に読み取って、「いらぬ心配」をしない、かつ、「白い箱」([3041])もしくは「あざとい業界」([3058])の気配のようなものあらば高感度・高精細に感知できる、といったあたりがゴール(目標)になろうかと思います。

 逆にいえば、なぜ「黙って工事」([3011])がいけないことで、すべからくツマビラカに「プレスリリース」する(ことが期待される:そして現に概ね期待に応えられている)のかといえば、単にIRというだけでなく、PRなんです、わかります([2765])。

 IRという意味では、どこをどう読んでも疑わしい点はありませんよ、という、一種「振る袖がない」、あるいは「袖を振りきった」ことを示すような内容さえ整えばよしとされましょう。

※スイカ畑の所有者にあってスイカの自家消費や簿外管理なんてとんでもない、といって、株(ただし植物でいう株)ごとに識別子をつけ、実れば実ごとに識別子をつけ、いえ、ハウス栽培のイチゴなどであれば「あたりまえのこと」でありましょう。

・国税庁「自家消費」
 http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6317.htm

・「羽振りがよい」
 http://thesaurus.weblio.jp/content/%E7%BE%BD%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8C%E3%82%88%E3%81%84

 > お金を惜しみなく使うさま
 > 金に糸目をつけない
 > 金遣いが荒い
 > 財布の紐が緩い
 > 財布の紐が緩まる
 > 金に糸目をつけない
 > 惜しみなく消費する
 > 羽振りがいい
 > 羽振りがよい
 > 糸目をつけない
 > 金回りがよい
 > 金遣いの荒い
 > 景気が良い
 > 金回りがいい
 > サイフの紐がゆるい
 > 景気がいい
 > サイフのヒモがゆるい
 > 商売繁盛の
 > 好景気の
 > 惜しみなく使う
 > 贅沢に使う
 > 気前よく使う
 > 湯水のように使う
 > 金離れがよい
 > 気前がいい
 > 豪勢に
 > 羽振りをきかせる
 > 金離れがよい
 > 気前がよい
 > 大金をつぎ込む

 > 金に困ることがないさま
 > 金回りがよい
 > 金回りがいい
 > 羽振りがよい
 > 羽振りがいい
 > ふところが温かい
 > 金に不自由がない

 うーん、一堂に会した類義語たちを見ているだけでふところが温まるような錯覚がございます。(あくまで錯覚です。)

 工事が予定より遅れるということは、端的にはIRであって、工費が計画よりかさむ可能性が出ましたという報告であるわけです。ただ、PRとしては、工費やスケジュールの話だけでは済まない、というのが[3031]の要点でした。

 PRといっても、たいへん狭くは「地中障害物」が「有害物質」でない限りは何ら問題ないといって、それ以上は取り上げないという立場もあるわけですが、広くは「近代化遺産」として、地域の文化(産業文化を含みます)や歴史に配慮、いえ、地域の方が文化や歴史について調べたり学んだりする機会ともなる一種「発掘」(「第1種発掘」などと…略)にあって、「黙って粉砕」([3031])していては、いまはよくても、後から振り返った時に惜しまれるという話でございます。

※ただちに惜しいケシカラン、とは申し上げておりません。

・朝日新聞「なぞの聚楽第、地震波で全貌解明へ 京大グループ」(2015年10月26日)
 http://www.asahi.com/articles/ASHBV358LHBVPLBJ001.html

 > 豊臣秀吉が京都に築き、8年後に破壊した居城「聚楽第(じゅらくだい)」の跡地の調査を、京都大防災研究所などのグループが27日から始める。住宅が密集して発掘調査に限界があるため、地表でできる地盤調査の技術を使い、なぞの多い聚楽第の全貌(ぜんぼう)に迫る。

 > 秀吉は聚楽第を関白の地位とともにおいの秀次に譲るが、秀次が失脚、自殺すると、徹底的に破壊するよう命じた。

 [3031]で前述の通り、「徹底的に破壊」(建築物や工作物を基礎まで含めて完全にスクラップ=解体し、廃棄物をすべて搬出)するにも多大なコストがかかります。まさに「羽振りがよい」とはこのことだと曲解されます。(あくまで曲解です。)

 われこそはという土木なかたにあっては、「聚楽第解体工事」外一式の工程表([3096])を描いてみるというのもよさそうです。そして、これには廃棄物の計画も含みます。え゛ー、どこか近隣の地に聚楽第の解体で発生した廃棄物が「処分」=当時、などと想像が広がります。「不自然な盛土」(上掲)とか、ないんでしょうか? 地形図や航空写真(上掲)で調べたいですね、わかります!

・ウィキペディア「聚楽第」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%9A%E6%A5%BD%E7%AC%AC

 > 聚楽第の破却に際し建物の多くは伏見城内へ移築されたとされる。西本願寺の飛雲閣、妙覚寺の大門、妙心寺播桃院玄関、山口県萩市常念寺の山門なども、聚楽第から移築されたという伝承があるが、いずれも伝承の域を出ず、今のところ聚楽第の遺構と認められている建造物は大徳寺の唐門だけである。

 とのことで、とはいえ、たいへん不確かです。仮に、いま、当時だとすれば、秀吉にあやかるべく「ウチのコレは、かの有名な聚楽第のソレなんです(キリッ」などと、「お釣りは300万円から」もびっくりの何か(いわゆる大風呂敷)が全国各地で渦巻くだろうということは想像に難くないことです。他方で、なぜ「破却」するのかといえば、「なかったことにする」的な「14歳っぽい」面があるわけですから、安易に移築などしない(秀吉が、させない)、あるいは、(秀吉の)意に反して移築された(モッタイナイといって廃棄物処理業者が廃材を建材として横流しした=現代でいえば)ことが疑われます。(あくまで勝手な想像です。そうした学説があるかどうかは調べておりません。恐縮です。)

※さらに、政治史として見た時には「もともと『聚楽第』はなかった(規模などが誇張されていた)」「行幸に際して(建物の規模などが)疑われたため、疑いを晴らすべく2度目の行幸を『大きな声』で要請した」「築浅の建築物をあえて破却することで権力を誇示しようとした」など、もっと多様な仮説を立てることが可能となりましょう。遺構の調査をどこで行なえばよいか決めるには、多様な立場からの仮説を広く把握し、さらに、よく吟味することが欠かせないとわかります。遺跡の調査(ただし発掘に限らない)は、われわれは土木しかわかりません、とはいっていられない話であるわけです。

 広範な調査が今後も続けられていくことと期待され、興味は尽きません。

・お釣りを貯めて300万円(2015年6月14日)
 http://www.news-postseven.com/archives/20150614_329023.html

 > 「500円硬貨が、初めて発行された1982年4月から、これまでに使ったのはせいぜい20枚くらいだと思うんです。今日まで33年間、貯金し続けています」

 > 女優の野際陽子(79才)は語る。

 > 「貯金箱といっても、お菓子の箱等の再利用。500円玉を手にしたら、とにかくその中に入れるんです」
 > 「箱がいっぱいになると、どのくらい貯まったのかはわからなくとも、とにかく重い。その重い箱をよっこらしょと抱えて銀行に持っていくんです(笑い)」
 > 「おろしたのは1度だけ。何年前だったかしら。300万円まで貯まったところで、自分のために念願のグランドピアノを買ったんです、少し付け足してね(笑い)」
 > 「それ以来、また貯金箱に入れる、重くなったら銀行に持っていく、を繰り返しているんです」
 > 「初期の認知症の人に共通する行動として、買い物をする時に、小銭が財布にあっても、大きなお金で支払うという傾向があるんですって」
 > 「それを見た時、毎日の買い物でお釣りの計算をしながら、お金を出し入れすることが大切だと気がつき、ますます積極的に500円玉を貯めるようになりました」
 > 「レジ前でこうした計算を瞬時にすることで頭は素早く回転。認知症の予防にもなるし、お金も貯まるし、一石二鳥じゃございませんこと(笑い)」

 当人が語っているんだか、記者が語っているんだか、あなたはだんだん、わからなくなってくる、なってく〜る、…そこを狙った書き方ですね、わかります!! もはや500円玉が糸で吊るされて右へ左へゆらゆらしていても驚かれません。

・666円
 https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/41368/1/WasedaKyoikuHyoron_28_1_Enjoji.pdf

 > 振り子の製作をする。といっても、五円硬貨に数10cmの糸を結びつけるだけでよい(図9a)。

 > とまれ、多くの生徒は「初めてのような作業」でかなり難渋している。

 > 筆者はかつて、「統合教材」なるものを提唱したことがある(円城寺、1984)。(略)その教材は、後に「総合教材」と呼ばれ、学際教育の一部に取り入れられたりしたものである。

・「とまれ」
 https://kotobank.jp/word/%E3%81%A8%E3%81%BE%E3%82%8C-584810

・情報保存研究会
 http://e-jhk.com/seminar/?p=439
 http://e-jhk.com/html/index.html

 > 産業文化博物館コンソーシアム(座長:樺山紘一印刷博物館館長、略称:COMIC)

 > 現在の主なCOMICメンバー
 > アド・ミュージアム東京
 > NHK放送博物館
 > 花王ミュージアム
 > ガスミュージアム
 > 紙の博物館
 > 資生堂企業資料館
 > 渋沢史料館
 > セイコー時計資料館
 > たばこと塩の博物館
 > ツムラ漢方記念館
 > 帝国データバンク史料館
 > 逓信総合博物館
 > 電気の史料館
 > 東芝科学館
 > トヨタテクノミュージアム産業技術記念館
 > 内藤記念くすり博物館
 > 日本工業大学工業技術博物館
 > 日本新聞博物館
 > 日本郵船歴史博物館
 > 物流博物館
 > 印刷博物館

 まず博物館→文書や史料の修復にかかる印刷や紙の技術→広告や出版→(広告業界の顧客である)大手企業の展示施設(ただし博物館でない)…というあたりで集まってできていると読み解かれましょう。しかし、船、専売、郵便、通信、電気、ガス、放送と並んでいながら、鉄道は入っていません。設立にあたって「お声がけ」しようにもチャネルがなかった(※)、ということなんだろうと勝手に理解しておくことにいたします。(あくまで勝手な理解です。)

※航空・宇宙も入っていませんが、特に宇宙にあってはまだ新しいので、博物館な気運のようなものはまだない、あるいはもっと科学技術全般(「科学館」や、研究所の一般公開など)だということか、スミソニアンで会いましょう、ということと見受けられます。建築に関しては現物が大事で「博物館」は成り立ちにくく(古いものは民俗史料に入れられ)、道路や橋などの土木にあっては、工事の記録と現物が大事で、他方、それなりにありふれたものであるので耳目を集めづらく、ということかと思います。

・ウィキペディア「スミソニアン博物館」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%B3%E5%8D%9A%E7%89%A9%E9%A4%A8

※鉄道業界は自前で広告業まで垂直です。鉄道業界の「自前」については[2824],[3107]も参照。産業文化の研究機能をいかに備えるべきかについては[3052]も参照。

※※鉄道業界では博物館すら垂直で、旧国鉄、私鉄、地下鉄をまとめて展示する、本来の意味での博物館はありません。図書館でいえば、国会図書館(国立の議会図書館)がないまま県立図書館だけがあって、しかも標準的な整備方法が浸透しておらず、ある県ではツタヤ、別の県では…なぜかツタヤ、とある県ではスナバ…いえ、スタバだという、そういうことが県立図書館のレベルで起きているにも等しい状況といえます。確かに、どこかの一館だけに「お声がけ」するのははばかられますね。

・「お声がけ」を控える
 http://www.takashimaya.co.jp/tachikawa/see/

 (百貨店での)「お声がけ」の話は、鉄道では「立ち番や車掌によるアナウンス」と読み替えることができましょう。このように一事が万事…とまでは決めつけませんが、いろいろなことに関して、一般の受け止め方と、鉄道などの業界での受け止められ方に、かなり「落差」のようなものがあるのではないかと心配します。(私が心配します。恐縮です。)

 交通安全などもそうですが、「標語コンクール」「ポスターコンクール」など、やたらコンクールだらけです。いま、御社(業界団体や財団などの主催者をすべて含みます)に、きちんと授賞作品を選出できるだけの「高度な知見」がありますか、といって、たいへんシビアに問われる何かが、その、それはもう、渦巻いているかのように感じられます。(あくまで主観です。)

※「新俳句」([3013])、「大型貨物船部門」([3066])も参照。

 授賞(文字通り「賞を(上から)授ける」、の意)するにあたっても、「大臣賞」「会長賞」「社長賞」に始まり、…いえ、終わるとはいいませんけれども、「佳作」まで、ピラミッド的に賞を設けられるわけです。この発想といいますか秩序といいますか、そうしたものは、業界内では重要でしょうけれども、一般に対してそのまま適用できるものでは、既になくなっているのではないかとウスウス感じられます。(あくまで主観です。)

 こうしたことは、一般の広告業であれば『分衆』などと称して、既に長い期間、十分に議論されてきたところであります。

・博報堂 生活総合研究所(1985年11月10日)
 http://seikatsusoken.jp/pdf/gougai851110.pdf
 http://www.hakuhodo.co.jp/business/seikatsusoken/

 > 「分衆の誕生」(日本経済新聞社)が発刊されて10ヶ月。
 > 博報堂社内資料

 うーん、「社内資料」が、実際に記載の日時に存在していたかどうか、社外からは検証できません。検証できない以上は、公表の時点に「過去の日付」を記載して作成されたことも否定できません。(あくまで理屈です。)

 > 情報の重層構造化
 > マスメディアにおける統合対応として各情報の重層構造化は重要です。例えば、
 > 最近、テレビ番組の中でニュースやクイズ番組に注目が集まっています。それは
 > どんな好みをもつ人が見ても、それぞれ自由な解釈が許されるからです。つまり、
 > 情報が重層構造であるためです。例えば、「世界まるごとHOWマッチ」の林ディ
 > レクターは次のようにインタビューに答えています。

 > 林「あのレストラン教えて」という人がいてもいい。・・ある若者しか見ないというのでなく、石坂浩二好きというおばさんが見てくれたり、「これはすごいことやってる」と思う男性がいたらうれしいし。結果的に多面的なつくりになっていることが、視聴率につながっているんで..(朝日新聞・10.18)

 > 広告においても徹底的にある人々だけを対象にした個別対応のものと、情報を重層構造にした統合対応のものが、いま消費者に人気があるようです。

 > 以上の統合対応で注意したい点は、これは従来の単純なマスねらいとは違うということです。横並び意識の高い同質的な大衆の存在を前提にしたままのある意味で楽観的なマーケティングと、互いに異質な分衆をなんとかたばねて分衆集合といったものへとまとめあげていこうとするマーケティングとは、はっきり違います。手間はかかりますが、ちみつな計算なしには人々の心はつかめない時代となっているようです。

 『これはひどい』ですね、と「朱っ☆」([3041])されたくありますが、いえいえ、「社内資料」だとされますから、正確さより速さが優先された結果の文章だろうととらえておきましょう。

 …それでもやっぱり「朱っ☆」してみます。(ただしふき取りません。キョーシュクです。)

 まず、インタビューの引用の前までの前半部を見てみましょう(見るだけで読みません、の意)。

 同じ段落の中で「例えば」は1回にしたくあります。「重要だ」と言いきるにはエビデンスが必要です。きわめて表層的には「ニュースやクイズ番組に注目が集まっている」ことがエビデンスだということですが、なぜ注目が集まっているのかの説明に「情報が重層構造である」が使われ、定義や説明が循環しています(トートロジーになっています)。

・「最近のテレビ番組の視聴率をジャンル別に比較すると、ニュースやクイズ番組が相対的に高い視聴率となっています。」

・「このような番組は、見る人の自由な解釈を許すことで、どんな好みをもつ人が見ても楽しめるつくりになっているのが特徴です。」

・「そのため、異なる好みをもつ多様な人々から広く支持されるに至っているのです。高い視聴率は、その証です。」

・「例えば、「世界まるごとHOWマッチ」の林ディレクターは次のようにインタビューに答えています。」

・「林(略)」

・(個人のブログ)林ディレクターをしのぶ(2008年12月17日)
 http://kenhatano.jp/blog/?eid=34

 > 今どきのテレビ作りは、撮る時はとりあえず撮って、編集に入ってからああでもないこうでもないとこねくり回す作り方が蔓延しているが、林さんは「撮っている時に編集上がりが見える」人だった。この人くらい編集が早かった人を僕は知らない。もちろん今のような一言一言に字幕を入れる時代ではなかったこともあるが、1時間番組を2本つないでまだ夜になっていなかったこともある。撮っている時に「ああ、ここはこのへんにしよう」とか「このブロックは最初に持ってこよう」とかを見極めているので、編集自体も早いし、何よりも余分な撮影をしない。僕の同期で林さんに影響を受けて「おれは余分なカットは撮ってこない」と豪語していたやつがいたが、こいつの素材は全然足りてなかった。

 > 一つの時代が終わったという気分だった。
 > 最後までかっこいい人だった。

・ウィキペディア「夢であいましょう」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A2%E3%81%A7%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86

 インタビューの引用を挟んで後半部へ続きます。ここで「情報の重層構造」を定義し、説明することとなります。さすがに「見る」だけでは難しい内容になってきますから、ちょっとだけ、ちょーっとだけ、「読んで」みましょう。

 テレビ番組には視聴率がありますが、広告には、そこまで明快な単独の評価指標はなかったはずです(当時)。媒体の発行部数や「広告費」くらいでしょう。この状況で「消費者に人気」と言いきるのははばかられます…いえ、はばかってほしいと思われます。(主観ですが私が思います。恐縮です。)

 また、「個別対応」「統合対応」なる『独自用語』をつくった上で、これを対置させていますが、ここにも無理があるように感じられます。(別の段落で説明されていますが、その説明に無理がある、の意。)

 「違う」「はっきり違います」と妙に強調されていますが、この時代において「違いがわかるインスタントコーヒー」(1970年から)のソレで、一種「ロングな流行語」(既に15年)だったことに注意して読む必要がありましょう。この文章が口頭での説明であったなら、話者は目を見開きながらチカラをこめて「違う」「違い」と発話されたと、いま「リアルに想像」されます。(あくまで想像です。)

※いわば、話の要所要所に、あるいは要所でなかろうともランダムに「違う」という流行語を混ぜるだけで「できるヤツ」「わかるヤツ」扱いされ、「わかってるじゃーん!」と(「上」から)評価される(よい評判を得られる)というわけです。この「わかってるじゃーん!」も、いつぞやの流行語だったように記憶しますが、いま、年代や出どころがわかりませんでした。

※いまならサシズメ、「ビッグデータ!」で「インサイト!」でしょうか(既に5年くらい古いかも)。マジックワードについては[2969],[3099]など、時代を問わず話者が目を見開きながらチカラをこめて発話するソレについては[2935],[3103]も参照…いえいえ、メッソウもございません。その結果として、かぎ括弧つきで早口で唱えられる便利でおトクな業界専用フレーズ(『ミスをすることがございます』『安全性を高める取り組み』[3117])が生まれてくるわけです、わかります。それならそれで、『電車は遅れる場合がございます』を頻出フレーズに([2862])していってもらいたいなぁ、とも思えてきます。ある単語やフレーズが頻出しさえすれば重要であると一種「誤認」されるはなし([3061])も参照。広告だって、曝露回数を増やしさえすれば(と考えられた時代があった)…いえいえ、そこまでは踏みこみません。

・「広告(業界・媒体)においても、同様のねらいをもった広告(出稿・部数)が多くなっています。」

・「マスメディアでは、単一の広告(実際のアートワークやコピー)が、より多くの消費者に受け入れられることが求められます。」

・「しかし、かつて「横並び意識が高い」といわれた「大衆の時代」とは違い、いまや、人々の心をつかむには、ちみつな計算によって『分衆』をたばねていくことが不可欠といえます。」

・「このためには、対象者を徹底的に絞りこむ「個別型の広告(制作・企画)」ではなく、異なる好みをもつ多様な人々=『分衆』に対応できる「統合型の広告(制作・企画)」とすることが必要になるのです。」

※うーん、「かつて〜いまや」構文を用いて対比を際立たせてみました。こういうのを「情報の構造化」っていうんじゃあ、ないですかねぇ。

・違いがわかるインスタントコーヒー(1970年から)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7

・NTT技術ジャーナル「みらい翻訳 コミュニケーションにおいて今も残る大きな壁「言語」に挑戦するスタートアップ企業」(2015年8月)
 http://www.ntt.co.jp/journal/1508/files/jn201508032.pdf

 > 日英翻訳の場合,英語→日本語よりも日本語→英語の方が翻訳の難度は高くなります.日本語の曖昧な表現を翻訳するためには,文章の趣旨や主語の存在を明確にする必要があり,英語を日本語化するよりも高度な解析が必要です.日本語以外の言語圏の人からの声として,機械翻訳は日本語から自分たちの母国語に翻訳する精度が低いという意見が多いことも事実です.

 上掲の「朱っ☆」の例で「広告(ドメインやプロパティ)」という形で示したのが、まさにその曖昧性解消のソレであります。この箇所だけで4種類の意味の「広告」が使われていました(省略されていた主語を補った結果、主語が「広告」だった、というものも含みます)。機械翻訳にかけるのは、かなり難しそうです。

 その「主語」も、あくまで日本語において自然な、の域を出ないで補っただけですから、機械翻訳にかけるには不十分です。

・エキサイト先生にご登場願う([3021]
※上掲の日本語を英語に、そして日本語に「再翻訳」した結果を以下に示します。

 > * 「同様な目的(広告およびコピーの数を置く)を持つ広告は、また、広告においてたくさんなる(産業とメディア)。」。
 > * 「それは、単一の広告(実際の版下とコピー)が、マスメディアによってより多くの消費者により受け入れられるように頼んだ。」。
 > * 「それが不可欠で それ といわれていることができる」 部分的な民族"が、CHIMITSUである計算により束ねられているけれども、それが、あなたが言った「ポピュラーな時間」と違う "私は等しく非常に気づいていた。「以前およびすでに人々の注意を引き付けているために。」
 > * 「私には、違うtaste=を持つ様々な人々が必要である」によって、 「オブジェクトはこれのために下に完全に狭められる、」個々のタイプ(生産と計画)の広告 広告(生産と計画)は統合した 「そして、それと一致しているかもしれないされた事」 「.」という部分的な人々 。

 もう少しです。

・「最近の広告業界の統計は、このような目的を持つ広告が増えたことを示しています。」

・「マスメディアの広告主は、単一の広告が、より多くの消費者の琴線に触れることを期待します。」

・「しかし、大きな問題があります。従来、人々は横並びを志向していましたが、いまは、人々はそれぞれ個別の趣味や好みを持っています。単一の広告が人々の心をつかむために、詳細な分析に基づいて『分衆』を統合することが不可欠です。」

・「したがって、顧客の属性を限定するセグメント広告は、いまや意味がないのです。」

・エキサイト先生にご登場願う(再)

 > * "The statistics of the recent advertising industry shows that advertisement with such purpose increased."

 > * "A sponsor of the mass media expects that single advertisement moves more consumers."

 > * "But there is a big problem. People intended equality in the past, but people have individual hobby and preference respectively now. It's indispensable to integrate "the part people" based on a in-depth analysis for single advertisement to attract people's attention."

 > * "Therefore the segment advertisement to which the attribute of the customer is limited is insignificant already.""

 > * 「最近の広告産業の統計は、そのような目的を持つ広告が増大したことを示す。」。

 > * 「マスメディアのスポンサーは、単一の広告がより多くの消費者を感動させることを期待している。」。

 > * "けれどもそこで、大きい問題である。人々は平等を過去に意図したけれども、人々は現在個々の趣味と好みをそれぞれ持っている。単一の広告が人々の注意を引き付けるように、詳細な分析に基づいて「部分的な人々」を統合することが不可欠である。」

 > * 「従って、顧客の属性が制限されるセグメント広告は、すでに取るに足りない。」。

 > どうしても翻訳できないときは? エキサイトの「プロの翻訳家」なら、1428円〜で回答できます。翻訳依頼はこちら

 うーん、外れずとも近からずな翻訳が出てきますが、いえいえ、日本語でこんなにヅケヅケと、書けませんですよねぇ。

・グーグル先生はお呼びでない

 > - "Recent advertising industry statistics shows that the advertisement with such purpose has increased."

 > - "Of the mass media advertisers, a single ad, we expect that touches the heartstrings of more consumers."

 > - "However, there is a big problem. In the past, people had been oriented side-by-side, now, people each have their individual hobbies and preferences. For a single ad to grab the hearts of people , it is essential to integrate the "minute Shu" on the basis of a detailed analysis. "

 > - "Therefore, segment advertising to limit the attributes of the customer is now there no meaning."

 うーん、かなり遠いですね、わかります。

・エキサイト先生(再々)

 > - 「最近の広告産業統計は、そのような目的を持つ広告が増大したことを示す。」。

 > - 「マスメディア広告者で、単一の広告、私達は、それがより多くの消費者の心の琴線に触れることを期待している。」。

 > - しかし、そこで、大きい問題である。過去に、人々は今や並んだでそれぞれ順応した 人々 それらの個々の趣味と好みを持っている 。単一の広告が人々の心臓をつかむように、詳細な分析に基づいて「緻密なシュー」を統合することが必須である。"

 > - 「従って、顧客の属性を制限するセグメント広告は、現在そこ 無意味 にある。」。

 うーん。…うーん。エキサイト先生に「CHIMITSU」と一種「投げ」られたので外した「ちみつ(緻密)」がなぜか復活するわ、「琴線に触れる」が再翻訳を経ても保持される一方で心臓がつかまれるわ…なんということでしょう。心臓に効く「パデキアのねっこ」がほしいです。

・「パデキアのねっこ」(1990年2月11日)
 http://file.retro.game-ss.com/20131129-05.png

・同、北米版(1992年10月)
 https://www.youtube.com/watch?v=NW-bCXITyU4




 > Alena: 'You found the Padequia Root?'
 > Alena: 'I couldn't find it myself and returned empty handed. I'm grateful!'
 > Alena: 'Quick! Cristo needs the Padequia!'

 > COMMAND - TALK
 > Alena: 'Quick! Cristo needs the Padequia!'

 > COMMAND - TALK
 > Cristo: 'Oooh...Oooh...'

 > COMMAND - ITEM - Padequia Root - DO - USE
 > Xxxxxx grinds the Padequia Root and gives it to Cristo!
 > Cristo's complexion returns to normal at once,and he recovers!
 > Cristo: 'Umm...Ha! Princess!'
 > Alena: 'You're fine, Cristo.'
 > Cristo: 'I'm ashamed. I'm the one who should be looking after you.'
 > Alena: 'Don't worry, Cristo. Now let's resume our journey to find Necrosaro!'

※complexion:顔色・血の気、ashamed:恥じている、Necrosaro:『デスピサロ』(登場人物の名前)。


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