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2013/4/23(火)2014/9/16(火) 掲載

【相鉄・JR直通線】 工事に遅れ、2018年度開業へ

23日、読売新聞の報道受け相模鉄道が公表、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から通知。相鉄線にATS-P、動作試験進む。

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が施工している都市鉄道利便増進事業「相鉄・JR直通線」で工事に遅れが生じ、開業予定が3年(当初計画より4年)遅い2018年度に延期された。4月23日、読売新聞の報道を受け、鉄道・運輸機構から通知された内容であるとして相模鉄道(相鉄)が公表した。同機構が同時に施工している「相鉄・東急直通線」の開業予定は2019年度とされている。

 相鉄線内では、運行管理システムの導入と指令所(相鉄では「司令所」と表記)の新設、誘導無線に代わる空間波デジタル列車無線の導入、車両限界および建築限界の拡大、JRと共通設計の新型車両への更新が進められるとともに、従来の相鉄型ATSをJR線と共通のATS-Pに変更する工事が2008年度から順次進められた。なお、JR側でも、東海道貨物線へのATS-P導入が2007年度に行われている。2013年3月以降、相鉄線内のATS-Pの動作を確認する試運転が行われるなど、直通に向けた準備がほぼ整いつつある。このほか、全駅の自動改札機が相鉄・JR直通線の開業までに順次、更新される。JR線およびJR線と直通または中間改札なしで乗り換え可能な他社線(東京メトロ東西線、千代田線、りんかい線、小田急線など)から乗車し相鉄線内で下車する利用客のIC乗車券において、自動改札機での処理時間が基準を超えないようにするためとみられる。

 都市鉄道利便増進事業は、鉄道会社や自治体(第3セクター)に代わって鉄道・運輸機構が新線を建設し、営業は既存の鉄道会社が行うことで、鉄道会社や自治体だけが一時期に過大な負担をすることなく迅速に鉄道網を拡充させる枠組み。「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」のほか、「阪急三宮駅改良」にも活用されている。事業費は相鉄・JR直通線が約782億円、相鉄・東急直通線が約1,957億円で、国、地方自治体(神奈川県および横浜市)が3分の1ずつ負担し、残りを借入金でまかなう。相鉄および東急は、同機構に施設使用料を払い営業する。

保安装置から見える完成後のダイヤ

 両線完成後の運転本数は、ラッシュ時で東急直通列車が毎時14本程度(うち目黒線10本程度、東横線4本程度)、JR直通列車が毎時4本程度と想定されている。運転本数の上では東急線との直通が中心であるが、相鉄本線、いずみ野線の全線にわたり相鉄型ATSがATS-Pに置き換えられるなど、まるで大部分の列車がJR線と直通するかのような設備投資が進められている。これは、同事業にJR東日本が参加していないため、JR側の車両改修を不要とする必要があったことも一因である。

 新線の新横浜は2面3線で折り返しが可能となる一方、羽沢(仮称)は2面2線の相対式ホームで、配線上も折り返し運転が考慮されていない。また、東急線ではCS-ATCが使用されているが、相鉄・JR直通線で運転する車両をATS-Pのみの対応で済ませるには、東海道貨物線分岐点−羽沢(仮称)−西谷間をATS-Pとする必要がある。相鉄と東急の境界駅は新横浜となることから、相鉄が管理する新横浜−羽沢(仮称)間はATS-Pになるとみられる。

 このため、新横浜をまたいで、相鉄線と東急線を直通して運転するには、車両がATS-PとCS-ATCの両方に対応する必要がある。東急線には、東京メトロ、埼玉高速鉄道、東京都交通局、東武鉄道、西武鉄道の車両も乗り入れているが、JRと同様、本事業に参加していない社局にまで費用負担を求めることは通常ないことから、新線の直通に対応するよう改修されるのは相鉄と東急の車両に限られるものとみられる。

 これらのことから、東急線側では、ATS-Pを搭載しない(改修を行なわない)車両の新横浜折り返しにより日吉−新横浜間に十分な運転本数を確保した上で、ATS-PとCS-ATCの両方を搭載した相鉄の車両、および、ATS-Pを搭載する改修を行なった東急の一部車両による渋谷−西谷間の直通、およびATS-Pのみを搭載する相鉄の車両の新横浜折り返しによって、新横浜−西谷間の運転本数を確保するのではないかと考えられる。すなわち、相鉄・東急直通線で運転される列車が毎時14本あっても、新横浜をまたいで直通する列車の本数はかなり少ないという可能性がある。逆に、新横浜での着席機会が多くなるため、実質的な利便性は直通運転中心のダイヤとなった場合よりも高いといえる。

本事業単独での利便増進効果には限界も
JR側の路線再編にも期待

 相鉄・JR直通線にJR東日本は関与しておらず、新設される羽沢(仮称)はあくまで相鉄の駅であり、既存の貨物駅であるJRの横浜羽沢とは別の駅となる。連絡線の建設だけに留まる同事業の枠組み上、当然ではあるが、横浜羽沢以南のJR沿線から新横浜へのアクセスの向上にはつながらない。また、相鉄線からJR線への直通列車では、現状のままでは羽沢(仮称)から武蔵小杉まで途中駅がないことになるため、相鉄線内での誤乗防止が大きな課題となる。

 なお、鶴見では、踏切の廃止により、貨物線に旅客ホームを設置することが可能となり、検討が進められている模様である。東海道線では、大船−藤沢間に新駅を設置する計画も進んでおり、相鉄・JR直通線の開業と前後してJR側の路線再編につながることが期待される。


リンク

・公式発表
 → 相模鉄道
   「深夜電車走行試験実施のお知らせ」(2013/8/1)
   「相鉄・JR直通線事業に関するお知らせ」(2013/4/23)
   「西谷駅引上げ線整備に関する説明会」(2009/3/16)
   「そうてつの安全・安心を教えて Vol.3 安全を支える鉄道の一日」(2009/1)
   「平成20年度 鉄道・自動車設備投資計画」(2008/5/22)
 → 相鉄ホールディングス
   「一部報道について」(2013/4/23)
   「平成22年度 鉄道・自動車設備投資計画」(2010/5/20)
 → JR東日本・東京電気システム開発工事事務所
   「東海道貨物線・信越本線ATS-P形装置使用開始」(2008/3/9)

・報道
 → 読売新聞
   「相鉄・JR直通延期へ…貨物線との接続工事遅れ」(2013/4/23)
   「線路接続、年内にも工事…相鉄とJR直通運転」(2013/5/25)
 → 産経新聞「都心直通目指し走行試験 JR乗り入れで相鉄」(2013/8/10)
 → 毎日新聞「相鉄:JR直通へ58億円投資 車両整備やATS設置」(2013/5/15)

・参考
 → 相模鉄道
   「都心直通プロジェクト」
   「都心直通プロジェクトに関するご質問:運賃はどのようになりますか」
 → 鉄道建設・運輸施設整備支援機構ほか 「都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線」
 → 国土交通省鉄道局 「都市鉄道利便増進事業の概要」
 → 市街地再開発(全国市街地再開発協会 機関誌) 第433号 「都市鉄道等利便増進法について」(2006/5)
 → 参議院 「議案審議情報:都市鉄道等利便増進法案」
 → 総務省グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース 電気通信市場の環境変化への対応検討部会 ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ(第2回) 資料2-7(東日本旅客鉄道株式会社 提出資料)「鉄道におけるワイヤレスブロードバンド活用の今後の展望」(2010/6/8)
 → JR東日本 「「在来線デジタル列車無線システム」の導入について」(2007/7/3)
 → 計測自動制御学会産業論文集 Vol.4 No.7 「ICカード乗車券システムにおける自律分散高速処理技術とそのアプリケーション」(2005)
 → 日本電子回路工業会 「電子回路ってなーに? 第1話:自動改札機とSuica」(2012/10)
 → ネコ・パブリッシング 「相鉄11000系まもなくデビュー」(2009/6/9)

・個人
 → 個人のページ 「ATS関連設備」(2011/10)
 → 個人のブログ
   「相鉄・東急直通線、事業説明会速報」(2013/3/7)
   「相鉄、JR・東急直通線 2012年下期羽沢駅工事状況推移」(2012/11/23)
 → ツイッター
   相鉄線の駅で撮影したとされる写真(2010/12/25)





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