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2013/5/8(水)2014/9/16(火) 掲載

【線路設備モニタリング装置】 京浜東北・根岸線で試験、2014年度末まで

8日、JR東日本が発表。「MUE-Train(ミュートレイン)」の成果受け、E233系1編成に搭載。営業列車で試験へ。

 JR東日本は8日、京浜東北・根岸線用のE233系車両1編成に「線路設備モニタリング装置」を搭載し試験を行うと発表した。これは、209系車両を改造した在来線試験電車「MUE-Train(ミュートレイン)」(2008年10月)を用いて行われてきた技術開発の成果を受けたもの。実際の営業列車にモニタリング装置を取り付け、機器の耐久性や検測データの精度を確認する。

 該当の編成は浦和電車区109編成で、9号車(サハE233-1009)の床下に一連の機器が取り付けられている。線路状態の撮影のため線路に向けて照射されるライトがあり、夜間などには容易に判別できる。線区によっては、床下の空間に余裕のある付随車が含まれない編成となる場合もあるため、今後、装置の省スペース化や設置方法の工夫などが必要になるものとみられる。

 京浜東北・根岸線ではこれまで、209系車両の先行試作車である901系車両3編成(1992年)の試験投入や、誤開扉を防止するためのホーム検知装置の試験(2004年11月)も行われている。

列車停止も異常「なかった」時の対応、迅速化に期待

 現在、軌道や架線の検測は、専用の検測車(E491系電車など)を定期的に走行させて行われている。検測は自動ではなく、高度に熟練した保線技術者が検測車に乗り込み、検測装置の画面を通じ目視で異常の有無や劣化の程度を確認している。検測の頻度は3ヶ月に1回で、次の検測までの間に劣化の程度が閾値を超える恐れがあれば予防的な(前倒しの)修繕が行われる。保守に過剰なコストがかかる上、人的ミスや気象条件などを引き金とした急速な劣化には対応できない。

 このため、乗務員はわずかでも異音や車両の異常な揺れを感知すればただちに列車を止め、安全に万全を期す。しかし、運転再開のための判断材料となる情報を、技術者ではない乗務員が現場で収集することは難しい。支障がなかった場合でも、安全確認に相当の時間を要することになる。営業列車からの検測データがリアルタイムで伝送され、技術者が遠隔で確認できるようになれば、異常検知時の対応が迅速化できると期待される。

事故調並み徹底分析の日常化で、さらなる安全へ

 営業列車による高頻度なモニタリングが実現すれば、これまでになく高い時間分解能で検測データが蓄積されることになる。気象や実績ダイヤ、貨物列車の積載量などと照合することで、劣化原因となる事象個別の影響を考慮した詳細な劣化予測ができる。急速な劣化の際も、直前状態の正確な把握や、閾値を超える引き金となった事象の特定が可能になる。

 現状では、このような徹底的な分析には膨大な人手やコストがかかるため、事故や重大インシデントが実際に起きるまで行われない。自動化および低コスト化により、今後、このような分析が日常的に行えるようになれば、事故の予防に大きく貢献するものと期待される。


リンク

・公式発表
 → JR東日本
   「「線路設備モニタリング装置」京浜東北線営業列車による走行試験について」(2013/5/8)

・報道
 → 日刊工業新聞「JR各社、輸送安定化に新技術投入−高い独自性・外販も視野」(2013/5/15)

・参考
 → JR East Technical Review
   「線路設備モニタリング装置の開発」(2012)
   「ホーム検知装置の開発」(2007)
 → JR東日本 先端鉄道システム開発センター 「MUE-Train(ミュートレイン)」
 → 東日本電気エンジニアリング株式会社 「検査車両による検査」
 → 鉄道総合技術研究所
   信号・情報技術研究部 運転システム研究室 「列車運行実績分析システム(@Plan)」
   軌道技術研究部 軌道管理研究室

・個人
 → 個人のブログ 「E233系 線路設備モニタリング装置」(2014/4/1)
 → YouTube 「線路設備モニタリング装置走行試験中の京浜東北線」(2014/2/9)





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