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2013/6/11(火)2014/9/16(火) 掲載

【東海道線】 大船−藤沢間に新駅、地元自治体が2015年度事業化へ

神奈川県、藤沢市、鎌倉市でつくる湘南地区整備連絡協議会が報告書を公開。熱海、辻堂以来、約100年ぶりの新駅に。

 東海道線の大船−藤沢間に、地元自治体の負担で新駅を設置する構想が進んでいる。

 神奈川県、藤沢市、鎌倉市の3者からなる湘南地区整備連絡協議会は2013年6月10日、2012年度の報告書を公開した。神奈川新聞の報道によると、新駅設置の前提となる藤沢市側の区画整理事業について、早ければ2015年度の事業認可を目指している。実現すれば、JR東日本管内の東海道線では、国府津−熱海間(旧熱海線を含む)では鴨宮(1923年6月)、熱海(1925年3月)以来、大船−国府津間では辻堂(1916年12月)以来、約100年ぶりの新駅となり、品川−藤沢間では新子安(1943年11月)、東戸塚(1980年10月)に続く新駅となる。

 同協議会が2010年度にまとめた報告書では、新駅は大船から約2.7km、藤沢から約1.9kmの位置に設置。旅客線のみにホームを設け、湘南新宿ラインを含む、東海道線の普通列車のみを停車させることを想定している。自由通路等を除く概算工事費は、相対式ホームの場合で約71億円、島式ホームの場合で約79億円。「ホーム形式の判断は、鉄道事業者により総合的な観点から行われる」としている。工事費の負担割合は未定。

 新駅は、旧湘南貨物駅(1985年廃止)および旧鎌倉総合車両センター(現鎌倉車両センター)深沢地区(2006年廃止、もと大船工場)の跡地を活用した一体的なまちづくりの中心。2030年時点で1日あたり約65,800人の乗降客を見込む。

新駅設置で近距離輸送に対応する動き、各地で活発

 東京−神戸間の長距離輸送を主眼とし1889年に全線が開業した東海道線は、全般に駅間距離が長く、地域内の近距離輸送の需要に応えきれていない。大船以北では横須賀線(1980年)、京浜東北・根岸線(1973年)が別線で運行され、東海道線を補完する緩行線の役割を果たしているが、大船以西にはこれに相当するものがなく、東海道線の各駅に利用者が集中することにつながっている。同報告書では新駅の設置により、大船、藤沢両駅の利用者の約7%が新駅を利用するようになるとしている。

 同様の課題を抱えるJR西日本管内の東海道線では、さくら夙川(2007年3月)、島本(2008年3月)、桂川(2008年10月)が新設され、さらに数駅の設置が計画されている。特に、六甲道−灘間で2016年の設置が予定されている「まや(仮称)」は、建設費をJR西日本が全額負担することや、新駅−灘間が約0.9kmと短いこと、折り返し設備が設けられることなどから、注目を集めている。JR東海管内でも、野田新町(2007年3月)、南大高(2009月3月)、相見(2012年3月)が設置されたほか、浜松−天竜川間にも設置を検討する動きがある。

近距離輸送と中距離輸送の両立が課題

 現状のまま大船−藤沢間に新駅が設置されると、所要時分の増大に直結する。地域内輸送の高頻度運行と中距離輸送の速達性を両立するには、両者の明確な分離や、途中駅の適切な通過が欠かせない。このためには、複々線の活用や追い越し設備の拡充などが重要になる。

 東海道線の東戸塚−小田原間は複々線であり、旅客線および貨物線として運用されている。速度や編成長が旅客列車とは異なる貨物列車と共用するため、旅客線ほどの高頻度運行はできないものの、藤沢(1993年12月)、茅ケ崎(1994年12月)では貨物線にもホームが設けられ、朝夕にライナー列車が運転されている(貨物線を経由するライナー列車の運転は1988年3月に開始)。これまで、東海道貨物線を走行できるのはATS-SNを搭載した車両に限られていたが、2008年度までにATS-Pが導入され、現在はほとんどの車両が走行できるようになっている。

貨物線の本格活用には設備拡充が必要

 2013年4月8日に茅ヶ崎市内で起きた踏切事故では、不通となった旅客上り線に代わり、貨物上り線を使って上り旅客列車が運転された。貨物線では茅ケ崎に停車できないため、茅ケ崎では普通列車を含むすべての上り列車が通過となった。また、2010年5月22日から翌日にかけて行われた辻堂のホーム拡幅工事では、上り旅客列車が茅ケ崎発車後に貨物線に転線し、藤沢の貨物線ホームに停車、貨物駅である横浜羽沢、新鶴見信号場を経由し、新川崎付近で横須賀線に転線の上、武蔵小杉に停車、品川で東海道旅客線に戻るという経路で運転された。これに加え、藤沢駅の折り返し線を活用した横浜経由の列車も運転された。

 いずれも、車両や乗務員の運用に特別な態勢を要したとみられるものの、手信号が必要となる逆線走行を行うわけではなく進路制御は自動であり、システム上は何ら通常と変わらない。現状の設備で可能な範囲において、最大限に柔軟な運行がなされたといえる。一方で、貨物線にホームのある駅が少ないこと、貨物線と旅客線の間で転線できる箇所や方向が限定されることなどから、現状の設備のままで日常的に多くの旅客列車を運行することは難しい。

 今後、東京−上野間での東北縦貫線の開通による「上野東京ライン」の運転開始(2014年度予定)、相鉄・JR直通線の整備による相鉄の駅としての羽沢(仮称)の開業(2018年度予定)など、広域で路線網が再編される動きが続く。増発列車の受け皿の一つになるとみられる東海道線では、藤沢、茅ケ崎における貨物線ホームの15両対応化、鶴見、東戸塚、平塚への貨物線ホームの設置なども現実味を帯びてくる。長期的には、横浜羽沢経由での速達・直通型普通列車の運行や、相鉄線、相模線、東海道線の間における直通運転、熱海方面から大船で折り返す短距離列車の積極的な設定なども選択肢となる。


リンク

・公式発表
 → 湘南地区整備連絡協議会
   「平成24年度 村岡・深沢地区拠点づくり検討調査」(2013/6/10)
   「平成22年度 村岡・深沢地区拠点づくり検討調査」(2011/9/6)
   「平成20年度 村岡・深沢地区拠点づくり検討調査」(2009/6)

・報道
 → 神奈川新聞
   「大船−藤沢駅間の新駅構想、本格始動へ」(2013/6/11)
   「JR大船−藤沢駅間の新駅構想、概算事業費は約100億円」(2011/9/8)
 → 日本経済新聞
   「JR東海道線が運転再開 並行貨物線使い始発から」(2013/4/8)

・参考
 → 土木学会 第65回年次学術講演会 VI-340
   「旅客輸送を確保した線路切換計画について」(2010/9)





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