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2014/5/22(木)2014/9/16(火) 掲載

【JR東日本】 常磐線(各駅停車)へのCBTC導入を検討、2020年ごろめど

自社開発のATACSと競合。WTO政府調達協定から除外されない東京メトロでのCBTC採用見据え、日中の線路閉鎖試験を想定か。


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 → 【常磐緩行線】「CBTCの導入を断念」交通新聞が報じる(2017年10月)

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 常磐線(各駅停車)の綾瀬−取手間で、2020年ごろにCBTC(無線列車制御システム)を導入するための設計作業が開始される。5月22日、JR東日本が発表した。

 同線へのCBTCの導入が検討されていることは、2012年6月に明らかになっていた。その後、2013年2月には、詳細な検討を行なうメーカーとして、フランスのアルストム社およびタレス社を選定したとJR東日本が発表している。2013年12月には、そのうちタレス社に設計作業を委託することを内定したと発表していた。契約は1年で、要求される機能を実現できるとJR東日本が判断した場合、タレス社に製造工事を委託するとしている。

 2014年1月8日、タレス社の発表によれば、同社のCBTCは世界各地の55のプロジェクトで採用されており、導入された線区の総延長は1300kmに及ぶ。同社は日本の鉄道信号の市場に参入する初の外国企業になる。常磐線(各駅停車)への導入では、70の車両(※)が対象になるとしている。2013年3月には、東京メトロ千代田線に乗り入れる小田急、JRの車両が、相互に3線を直通できるよう改造されることが発表されているため、CBTCの導入が正式に決まれば、これらの車両でも対応が必要となる。

※ 「70 trains」とされ、松戸電車区に配置された10両編成20本(200両)のうち7本(70両)をCBTCに対応させるとみられる。JR線内のみで折り返す運用はなく、他社の車両も乗り入れることから、車両、線路とも、CBTCとCS-ATCの併用が課題となる。

政府調達協定で求められる国際入札
規格準拠と安全性認証が必須に

 CBTC(Communication Based Train Control)は、地下鉄や新交通システムなどの都市交通向け列車制御システムで、IEEE1474として規格化されている。各国の都市交通の整備における国際入札では、国際標準規格への準拠と、公的機関による国際安全性規格の認証が求められているという。2014年2月、日立製作所は、欧州の認証機関から最高レベルの国際安全性規格の認証を、日本のメーカーでは初めて取得したと発表している。

 2010年2月現在、JR東日本はほかのJR各社、東京メトロとともに、政府調達に関する自主的措置対象機関およびWTO政府調達協定の対象機関に指定されており、予定額が一定以上となる物品の調達には国際入札が必要である。直近では、熱海駅の建て替え工事が国際入札になっている。

 JR東日本は、JR東海、JR西日本とともに完全民営化しているが、これまでEUの同意が得られず、政府調達協定の対象機関から外されていなかった。日本経済新聞の報道によれば、2014年8月、これまでWTOに異議を申し立てていたEUが2014年10月までに異議を取り下げる見通しになった。

東京メトロで高まるCBTC採用の可能性
日中に線路閉鎖できる我孫子−取手間

 一方、東京メトロは完全民営化に至っていないため、引き続き国際入札が必要となる。EUとの交渉の中で日本側は、安全に関わる物品を入札の例外とする「安全注釈」の適用範囲の明確化、詳細な調達情報のインターネットでの公表を約束したという。これは、東京メトロで保安装置の国際入札が行われ、CBTCが採用される可能性が高まることを意味している。

 常磐線(各駅停車)は、東京メトロ千代田線と密接な関連がある一方、ほかのJR線との関連がほとんどないことから、CBTCの導入を検討するのに最適と判断されたものとみられる。特に、我孫子−取手間の緩行線ではラッシュ時以外に列車の運行がなく、各種試験を行なうのに適している。2002年2月には、同区間を線路閉鎖した上で、現在、PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor:永久磁石同期電動機)として知られる新型モーターを搭載したE231系車両の試験が行われている。その後、東京メトロ千代田線に導入された16000系車両(2010年11月)ではPMSMが採用され、常磐線(各駅停車)にも乗り入れている。現在行なわれている利根川橋りょうの架け替え工事でも、緩行線の線路敷が作業用のスペースとして活用されている。

CBTCもしくはATACSの導入で
大幅な改修が迫られるATOS

 JR東日本では、同様の無線列車制御システムとしてATACSを開発しており、2011年10月に仙石線で使用開始している。埼京線でも、2013年から2018年にかけて導入される予定である。これと並行してCBTCの導入を検討する背景には、海外での展開に向けたノウハウの吸収などの目的もあるものとみられる。保安装置や信号システムを自社で主体的に開発・評価できる態勢を持つ鉄道事業者は、事実上、JR3社に限られ、ほとんどの鉄道事業者では、メーカーの提案に依存する状況にある。日本でも、国内メーカーがCBTCを提案するようになれば、一気に普及する可能性がある。

 常磐線(各駅停車)ではATOSが導入済みであるが、CBTCを導入する場合、ATOSの大幅な仕様変更が必要になるとみられる。CBTCでは移動閉塞となることから、従来の軌道回路による固定の閉塞を前提とした部分で改修が必要となる。一方、単線並列運転が可能となることで、異常時に柔軟な対応が可能となるなど、得られる利点も大きい。なお、これらはATACSを導入する場合でも同様である。


リンク

・公式発表
 → JR東日本
   「CBTC導入検討の設計を委託するメーカー選定(内定)」(2013/12/20)
   「常磐緩行線へのCBTC導入検討の設計契約をタレスと締結しました」(2014/5/22)
 → Thales 「East Japan Railway selects Thales as provisional manufacturer for the first ever CBTC project in Japan」(2014/1/8)
 → 日立製作所
   「都市交通向け無線信号システムの国際規格認証を取得」(2014/2/20)
 → 小田急電鉄・JR東日本 「小田急線 千代田線 JR常磐線(各駅停車) の相互直通運転に向けた準備を開始します〜小田急・JR東日本車両も3線直通可能な車両にしていきます〜」(2013/3/27)

・報道
 → 日本経済新聞 「政府調達協定からJR除外 EUが異議取り下げ」(2014/8/13)
 → 建設通信新聞 「熱海駅建替え14年秋着工 JR東日本横浜支社」(2014/9/3)

・参考
 → Thales 「Train control / CBTC」(2014/3/31)
 → 電気技術開発 「鉄道:CBTC」
 → 外務省 「WTO政府調達協定」(2014/3/19)
 → 内閣官房 「政府調達に関する自主的措置対象機関」(2010/2/1)
 → 慶應義塾大学SFC研究所 2011年度森基金研究成果報告書 「日本の鉄道輸出促進に向けて」(2012/2/29)
 → 日本電気技術者協会 「PM同期モータについて」
 → 東鉄工業 「常磐快速線利根川橋りょう改良その1工事を受注」(2009/9/16)

・個人
 → 個人のブログ 「常磐線利根川橋梁架け替え工事」(2013/11/25)


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