2012/9/25(火) − 2014/9/16(火) 掲載
【りんかい線】 PTC更新で大井町に「出発時機表示器」
京三製作所が概要を公開、JR側に設置のCTC中央装置は手つかず。「羽田空港アクセス線」の検討にも影響か。
埼京線と直通運転を行なっている東京臨海高速鉄道(TWR)りんかい線で、2011年5月、列車運行管理システム(PTC)が更新された。同社が2011年9月5日に公開した「安全報告書 2011」によれば、2010年度中に機器の設置を完了しモニターランを行なっていた。2012年9月25日に公開した「安全報告書 2012」では、2011年5月に新しいシステムへの切り換えを完了したとしている。
同システムを納入した京三製作所のページによれば、同線の東京テレポートに設置した「旅客案内制御装置」から、新たに構築した「システムLAN」を通じ、大井町の地下3階にある同線の1番線(大崎・新宿方面)に設置した「出発時機表示器」の表示を制御している。
ツイッターに投稿された写真によれば、同線の大井町に設置された「出発時機表示器」は、JR線内で設置されている出発時機表示器や、つくばエクスプレス線で設置されている「出発抑止表示器」とは外観が大きく異なっており、ハードウェアとしてはまったくの別物とみられる。埼京・川越線に導入されているATOSの線区別ホスト(2005年7月)によって、JR線内の出発時機表示器と同様に使用されることから、同一の名称としたものとみられる。今回、設置された「出発時機表示器」は、大崎でのホーム満線時に、りんかい線からの直通列車が大井町−大崎間で駅間停車するのを防ぐため、大井町での発車を遅らせる指示を出すために使用される。
出発時機表示器が越境的に設置された例としては、総武線(各駅停車)の千葉(1・2番線)、総武線(快速)の稲毛(3番線のみ設置、4番線は未設置)などがある。東京メトロ東西線、千代田線との直通では、東京メトロが管轄するホーム(中野、西船橋)や駅(綾瀬)では出発時機表示器は設置されておらず、ATOSから指示を出すことができる出発時機表示器が他社線内に設置されるのは、今回が初めてである。
PTCによる旅客案内で 非連動駅のCTC駅装置が不要に
りんかい線の各駅で既設の電光掲示板(発車標)および自動放送装置には変更がないが、PTC中央処理装置と接続する「旅客案内制御装置」は東京テレポートのみに設置され、ほかの駅では、東京テレポートの装置によって制御される「情報伝送装置」によって、自動旅客案内が実現されている。
りんかい線では、八潮車両基地(品川埠頭分岐部信号場)、東京テレポート、新木場のみが連動駅(構内にポイントのある駅)であるが、非連動駅(構内にポイントのない駅)でも自動旅客案内を導入するため、全駅にCTC駅装置が設置されていた。今回のPTC更新で旅客案内機能がPTC側へ移されたことにより、非連動駅でのCTC駅装置の設置が不要となったとみられる。
りんかい線のCTC中央装置はJR側に設置 改修見据え、新線構想か
今回、更新されたのはPTCのみで、既設のCTCは更新されていない。既設のCTC駅装置は、JRのCTC中央装置によって管理される構成となっており、りんかい線のPTCとは、JRの装置側に設置された「PTC I/F装置」を介して接続されている。また、両線のシステム間で「JR大崎接近列番」を送受信するため、PTC中央処理装置の「情報連絡装置」が、CTC装置のネットワークに接続されている。
りんかい線(開業時は「臨海副都心線」)の第1期開業区間である東京テレポート−新木場間は、旧国鉄の「京葉貨物線」として一部、着工されていた区間を旅客線に転用したもので、線路の配線やCTC装置の設置場所などについても、京葉貨物線として計画されたものが踏襲された形になっている。このため、信号設備上は「JRりんかい線」と呼べる状況にあった。
りんかい線をめぐっては、国土交通省・交通政策審議会の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」でJR東日本が説明した「羽田空港アクセス線構想」で、ルートの一部として活用する案が示されている。このうち、りんかい線の配線を変更する案ではCTC装置の改修が必要となる。この点では、2020年に東京での開催が予定されている世界的スポーツイベントとは関係なく、既設の装置を置き換える時期や、京葉線でのATOSの導入などを考慮して、今後、検討が進められるものとみられる。
リンク
・公式発表
→ 東京臨海高速鉄道(TWR:りんかい線)
「安全報告書 2011」(2011/9/5)
「安全報告書 2012」(2012/9/25)
・参考
→ 京三製作所
京三サーキュラー Vol.63 2012 No.1 「01 りんかい線運行管理システム」(2012)
→ 東京臨海高速鉄道(TWR、りんかい線)
「列車の運行管理」
「車両について」
・個人
→ ツイッター
りんかい線の大井町で撮影したとされる写真(2012/6/19)
関連ページ
・ 導入済み線区
→ 埼京・川越線
・ 導入予定線区
→ 京葉線
・ ニュース
→ 【埼京・川越線・山手貨物線】 線区別ホストが稼動
→ 【つくばエクスプレス】 PTCと「出発抑止表示器」を採用
→ 【ATOS拡大】 青梅線・五日市線、横浜線、京葉線に導入へ
→ 【羽田空港アクセス線】 休止中の貨物線を活用、羽田空港乗り入れを検討
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