2003/6/15(日) 更新

身近なATOS

ATOSとは
 → 概要と機能
 → 旅客案内と運行管理
 → 運行管理の変遷

電光掲示板
 → 外観と機能
 → 設置形態
 → 基本的な表示
 → 変則的な表示
 → 遅延時の表示
 → 各種案内の表示

自動案内放送
 → アウトライン
 → 実例1(基本的な放送)
 → 実例2(その他の放送)
 → 検証

出発時機表示器
 → 外観と機能
 → 設置形態
 → 表示

広がるATOS

ATOSの話題

リファレンス

写真データベース

サイト内検索
 





身近なATOS

旅客案内

自動案内放送

→ 検証

デジタルな音声(?)

 ATOSの放送に使われている音声は長音の発音が特徴的で、音の組み合わせが同じ部分は別の単語であっても同じように聞こえる。このことから、コンピュータで作られた合成音声なのではないかと推測できる。ただ、各駅の放送装置でリアルタイムに合成されているわけではなく、あらかじめ合成した音声(単語)を録音したデータが放送装置に用意されていて、それを必要に応じてつなぎあわせて放送しているようである。

 高品位な音声合成では、素材としてアナウンサーの肉声が使われる。すべての音節を含む文章を一通り読み上げるなどの方法で、合成のもとになる音声を入力、その音声から必要な音声を組み立てて出力する。例えば「アトス」という発音なら、「a-t」+「t-o」+「o-s」+「s-u」と組み合わせ、アクセント部分は音程を高くする。つなぎ目やアクセントをいかに自然にできるかは、音声合成ソフトウェアの性能による。

 音声合成には、アナウンサーが個々の音を発音して録音するのに比べ、体調や加齢に影響されないというメリットがある。最初の録音から数年後に別の音声が必要になった、という場合にも、全く同じ声質で新しい音声を作成できるというわけだ。

 ちなみに、ATOSの男声と同じ声の放送が近鉄の駅や大阪市営地下鉄の車内で、女声と同じ声の放送はゆりかもめの駅でも聴ける。これらはATOSの放送とは違い、極めて自然に聞こえる。このことも、ATOSの放送に使われている音声が肉声ではなく合成音声なのではないかと推測できる根拠である。

次第に向上する声質

 ATOS放送の音声は当初、案内放送の音声としては例がないほど暗く、アクセントの強弱が激しかった。放送が単語合成式であることとも重なり、放送全体が非常に不自然だった。これまでに数次にわたる改良が重ねられ、現在ではかなり自然な放送になっている。

 最初に改良されたのは、声の暗さであった。次に、「○○行きが」を「○○」と「行きが」に分けるといった、あまりに細か過ぎる単語の区切りが見直された。

 さらに、最新の放送では声質そのものが改良されている。今までよりアクセントの強弱が自然になり、耳に残る感じが薄まっている。また、今までは一定の速度で淡々と発声していたが、文章に応じて発声の速度を変えているようだ。(人間がしゃべるなら当然だが、音声の合成でも同じことができるようになったのであれば、技術の発展に目を見張るものがある。)

 最終的には単語合成を意識させないくらい自然な放送になることを期待したい。

自動案内放送の課題

 自動放送装置またはアンプ/スピーカー回線の都合によるものと見られるが、同一ホームでは同時に一つの放送しか流れないという駅が多い。基本的には、発車放送>接近放送≒到着放送>次発放送という優先順位がつけられているようであるが、場合によっては流れない放送もあるというのは不便なことである。

 ラッシュ時などには、自動放送を打ち消すようにホーム立ち番の駅員による肉声のアナウンスが重なる。例えば、「♪まもなく/1番線に/快速…」と流れ始めた自動放送に、わざわざ割り込んで「ぇー今度の1番線、上り電車、○○行きの快速です!…黄色い線の内側まで下がってください!」と駅員がアナウンスしている。

 ATOSによる自動案内放送で統一された「種別/行き先」という情報の提示順序も、駅員による放送では適当になりがちである。さらに、原則として不使用になった「上り/下り/内回り/外回り」という表現、視覚障害者が歩く可能性のある点字ブロックの上は安全でなければならないというロジックから決められた「黄色い線までお下がりください」という注意喚起表現なども、駅員のアナウンスでは徹底されにくい。

 ハードウェアとしてATOS連動の柔軟な自動案内放送が導入されただけでは、決して利用者にとってベストな状態にはならないのである。「可能な限り自動案内放送で済ませる」といった、いわばソフトウェア面の整備が必要なのではないだろうか。


関連ページ

ATOSの話題

フォーラム
 → 「音片」のバージョン(世代)と「今後の課題」
 → ITU-T P.800 Annex E「CMOS(Comparison Mean Opinion Score)」
 → ITU-R BS.1387-1「PEAQ(Perceptual Evaluation of Audio Quality)」
 → JIS F0062「船舶−音声合成システム用語及び適用基準」

 → 行先や発車時刻を自動で案内するしくみ(「放送文選択コード」)
 → TOA「音声ファイル装置」(1970年)
 → 東洋メディアリンクス(1991〜1999年)
 → ユニペックス「TAD-934 PRC対応自動放送装置」(オープン価格)・「VG-1/26 外線接続用コード」・「RK-SR2 優先制御選択基板」 / TOA「ダイオードマトリクスボードキット DB-014」・「音声応答装置」・「メロディクスカード」
 → 永楽電気「案内放送装置(EKAシリーズ)」の「ATOSユニット」

 → 【千駄ケ谷駅・馬喰町駅・上野駅・修善寺駅】「電子電鈴」(1964〜1985年ごろ)
 → 【新宿駅・渋谷駅】「発車メロディー」の導入(1989年3月)
 → 【銀座駅・霞ケ関駅・茅場町駅・永田町駅】『営団ブザー』(1989年7月)
 → 千葉急行線(1992・1995年)の自動放送は京都市営地下鉄と同じ?

リファレンス

音響




2000/1/31(月)からの延べ閲覧数