2014/9/16(火) 更新

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川崎−立川間で導入済み

 南武線では、川崎−立川間および尻手−新鶴見間でATOSの導入が完了している。2006年3月26日、線区別ホストが使用開始になった。交通新聞の報道による。

 ATOSの導入に合わせ、全駅で電光掲示板が整備された。次列車の接近状況を図示する機能が追加されている。一部の駅では狭小なホームに合わせ小型の電光掲示板が採用されたほか、住宅街に近い駅では自動アナウンスの音量を下げるなど、同線特有の条件に配慮した対応が見られる。

 中原電車区への入出庫を扱う武蔵中原駅では、他駅より約5ヶ月早い2005年10月2日にATOS駅装置の使用を開始している。

 川崎の南武線ホームでは、早期からATOSに連動する自動案内放送が導入されていた。京浜東北線へのATOS導入(1998年8月)のためとみられる。また、南武線へのATOS導入の前から、主な駅には電光掲示板が設置されていた。

 出発時機表示器は、川崎−立川間の全駅で設置されている。


次列車の接近状況を図示

 南武線へのATOS導入に際し、電光掲示板で次列車の接近状況を図示する機能が追加された。この機能は、南武線以降の導入線区だけでなく、ほかの導入済み線区でも順次、追加が進められている。なお、埼京・川越線へのATOS導入時には、次列車が前駅を発車したことを文字で表示する機能が追加されており、これを拡張したものといえる。駅員用の在線モニタと共通の情報を活用しているものとみられる。

 LEDによる表示だけでは意味が通じない恐れがあるためか、LED表示面の下部に駅名が付記されている。ただし、ATOS導入後に開業した西府、高架化された稲城長沼、南多摩など一部の駅では駅名の付記がない。また、右端にも(当駅の)駅名が付記されているものと、右端だけないものとが混在しており、統一されていない。

 この表示は、折り返しとなる列車についても表示される。同一ホームに複数の方向から入線する列車がある場合、駅名を付記する方法では対応できない。

 この表示は「電車がまいります」の点滅表示と同様、列車が閉塞を移動し在線モニタの情報に変化があったタイミングで、リアルタイムに表示されているものとみられる。また、この表示は運行情報よりも優先度が高く設定されているものとみられ、運行情報が最後まで表示されないうちでも割り込んで表示される。このため、場合によっては、運行情報の後半部分がいつまでも表示されないことがある。



(府中本町駅、2014/3 撮影)



(南多摩駅、2014/7 撮影)



(稲城長沼駅、2014/8 撮影)

 このような次列車の接近状況の表示は、東京メトロの各線でも以前からみられたものである。東京メトロでは、「当駅 ◇ 前駅   前々駅」(◇は電車マーク)と、文字を使用して表示しているため、駅名を補う必要がない。また、東京メトロの表示では、次列車が右から左へ進むが、ATOSでは左から右へ進む(※1)。また、ATOSでは、接近状況の表示範囲が電光掲示板の表示文字数に依存し、全角10文字分の電光掲示板では、3つ前の駅まで表示される。

※1 一般的な駅では、対向式ホームでの電車の進入方向は右から左で、島式ホームでは左から右となる。枕木方向に設置した電光掲示板で線路方向の動きを直感的に表示することはできない。


一部の駅に小型の電光掲示板
ホーム上屋の低さに対応か

 南武線には狭小な駅が多く、ホーム幅の狭い対向式ホームの駅も多い。電光掲示板をはじめとする各種サインの掲出では、安全性および良好な視認性を確保するため、サイン最下部を床面から一定の基準高さに揃える必要があるが、大型のサインを掲出するにはホーム上屋の高さが足りない駅もある。構造物の強度によっては、掲出できるサインの重量に制限が出ることもある。また、放熱のため、サインの周囲(特に上部)には一定の空間が必要となる。

 矢向、鹿島田、稲田堤では、従来の電光掲示板の外観を踏襲しながら、大幅な低背化を図った小型の電光掲示板が新たに製作され設置された(2005年11月)。尻手のコンコースでも、同型の電光掲示板が設置されている。

 全角8文字分・1行タイプの電光掲示板をもとに、従来よりドットピッチの狭いLEDマトリクスに換えることで、LED表示面を2行としている。上部の方面表記部分の高さが約半分に短縮され、全体の高さが抑えられている。



(稲田堤駅、2014/8 撮影)

 南武線へのATOS導入に際しては、1行タイプの電光掲示板は新設されず、すべて2行タイプとされた。次列車の接近状況の表示や、将来の運行体系の再編に備えたものといえる。



(稲田堤駅、2014/8 撮影)

新駅「西府」が開業
システム改修費も地元が負担

 2009年3月14日、府中本町−谷保間に新駅「西府」が開業した。西府は、2面2線の非連動駅(構内にポイントのない駅)で、対向式ホームである。上下線とも、全角12文字分・2行タイプの電光掲示板が設置されている〔写真〕。

 西府は、南武線へのATOS導入が完了した後の開業となったことから、導入済みの線区別ホストや各駅の装置において改修が必要となった。

 駅舎の建設費は約23億7000万円、自由通路を含む総事業費は約32億円で、約26億円を土地区画整理組合、約6億円を府中市が負担した(※2)。



(西府駅、2014/3 撮影)

 当初、ATOSやICカード出改札システムにかかる駅設備改修費として約10億円を地元が負担するとの報道もあったが、川越線の新駅「西大宮」と同一日に開業することで節減された。2008年3月に単独で開業した武蔵野線の新駅「越谷レイクタウン」では地元が約6億円を負担している。

※2 地元負担分のうち、自由通路および駅設備改修費(ATOSおよびICカード出改札システム)にかかる費用の一部は、国土交通省のまちづくり交付金約12億8000万円により賄われた。新駅設置を含む土地区画整理事業に対しては、東京都の補助金約10億7200万円も支出されている。


 西府は非連動駅(構内にポイントのない駅)であるため、改修は在線モニタや案内用情報(停車駅として表示するための駅名など)の追加といった小幅なものに限られる。このため、駅設備改修費の大部分は、ICカード出改札システムの改修費用とみられる。



(西府駅、2014/3 撮影)

 なお、1年後の2010年3月13日には、武蔵小杉で横須賀線ホームが新設されている。西府、西大宮のケースとは異なり、武蔵小杉は自社線の間での新しい乗換駅となるため、運賃算定の基準となる最短経路が変更になる駅の組み合わせが多数生じる。ミスを防ぐため、敢えてほかの新駅開業とは時期をずらしたとみられる。


快速運転が「復活」

 2011年4月、南武線での快速運転が開始された。3月12日のダイヤ改正から開始される予定だったが、3月11日に発生した東日本大震災の影響で1ヶ月近くずれ込んだ。

 南武線では過去、1969年12月から1978年10月までの間にも快速が運転されていたため、「復活」ともいわれる。ただし、当時の快速は、車両性能や両数の異なる編成の混在による輸送力の偏りを補う役割もあり、車両が統一された後に廃止されたという経緯がある。

 今回の快速運転では当初、追い抜きが設定されていなかったが、2014年3月、前年12月の稲城長沼での上り線の高架化をうけてダイヤが刷新され、現在、上りは武蔵中原、下りは武蔵溝ノ口と稲城長沼で緩急接続を行なっている。快速運転が開始される前と比べ、快速が通過する駅においても列車本数が維持され、純粋な増発となっている。



(稲田堤駅、2014/8 撮影)

 通過駅のない稲城長沼−立川間では、上り快速のみが「快速」と案内され〔写真〕、下り快速は「各駅停車」と案内されている〔写真〕。

 上り快速の例では、快速の直前の各駅停車は武蔵中原まで先着し、武蔵中原で快速に追い抜かれる。一方、快速の直後の各駅停車は川崎まで先着する。この点に関して、ホームでは特段の案内は行われていない。武蔵中原での停車中に案内されるため、ただちに問題があるとはいえない。





(南多摩駅、2014/7 撮影)



(稲城長沼駅、2014/8 撮影)

 追い抜きに関する案内については、中央線(快速)、埼京線など、それに、今後ATOSが導入される予定の横浜線、京葉線で必要となるものの、これまでATOSでは対応する機能が実装されずにきている。他社線では、東京メトロ、京浜急行、つくばエクスプレスなどで、充実した案内が行われている。


稲城長沼:高架化、2面4線に

 南武線では、1992年度から、稲田堤−府中本町間を高架化する連続立体交差事業(東京都、JR東日本。2015年度まで)が進められている(※3)。2005年10月に矢野口付近、2013年12月に矢野口−府中本町間が高架化された。稲城長沼を2面4線化する工事が完成すれば、一連の工事が完了する。

 稲城長沼では、2011年12月に下り線、2013年12月に上り線が高架化された。現在、1番線の工事が続いており、上り列車はすべて、速度制限のかかる2番線(上り中線)を使用している〔写真〕。本格的な輸送力増強や運行体系の再編には、工事の完了を待つ必要がある。





(稲城長沼駅、2014/8 撮影)

※3 尻手−武蔵小杉間の連続立体交差化についても、川崎市が調査に着手するとしている。


稲城長沼:新型の出発時機表示器

 稲城長沼では、2011年12月24日に行なわれた下り線の高架化に際して設置された出発時機表示器が、形状および配線方法が変更された新型となっている〔上写真〕。なお、同時に高架化された南多摩でも、同型の出発時機表示器が設置されている。

 底面および天面に、ほかの機器(レピーターやITVなど)と同様の金属製の継手が設けられ、これまでケーブルを大きく曲げる必要のあった天吊りでの設置でも、ケーブルがまっすぐに接続できるようになっている。従来は、樹脂製カバーを着脱して配線作業を行なう必要があった。

 また、これまで背面の左右に2箇所あった放熱孔が側面(正面右側)1箇所および底面1箇所に移され、奥行がやや延長されている。一連の変更は信頼性や施工性を向上させることが目的とみられる。





(稲城長沼駅、2014/8 撮影)

 底面に2つの継手が設けられていることから、上下に2台を並べる形での設置にも対応している可能性があり、設置箇所によっては配線作業が大幅に簡素化されることになる。

 なお、出発時機表示器は、各設置箇所に応じた表示が行なえるよう個別に設定され、設置箇所を示す文字列が背面などに表記される。以前は、現場で作成されたとみられるラベルが貼られていたが、最近では、筐体に直接、表記されている。このことから、個別の設定が現場ではなく、メーカーで出荷時に行なわれるようになった可能性がある。配線の簡素化とともに、限られた時間での作業を迫られる現場での施工ミスを防ぐ対策の一環とみられる。

 同型の出発時機表示器は、横須賀線の北鎌倉−横須賀間(2009年度)および武蔵野線(2011年度)で設置されていたが、2010年3月に開業した横須賀線の武蔵小杉、2011年3月までに高架化された中央線、南武線の各駅、および浦和(1〜4番線)では、従来型の出発時機表示器が設置されていた。2011年度以降に工事が進められた国立(2012年12月、3番線のみ)、浦和(2013年3月、5・6番線)、東京および上野(「上野東京ライン」の列車に対応する箇所)では、稲城長沼および南多摩と同様に新型が設置されている。稲城長沼で工事が続けられている1番線でも同型が設置されている〔下写真〕。今後、ATOSの導入が予定されている線区や、導入済み線区でのメンテナンスに際し、同型が設置されていくものとみられる。



2006/5/20(土) 更新

駅での事前告知

 武蔵中原、武蔵小杉などの駅では、ポスターで電光掲示板の利便性をアピールし、使用開始の時期を知らせていた。今までのATOS導入線区では見ることができなかった対応である。

 ATOSの導入がテレビや一般紙で取り上げられることはほとんどない。公式サイト上では一定の情報が提供されているが、わざわざ見に行く利用者は限られる。駅における告知は、必要な範囲で情報を的確に伝えるための「最適解」といえる。


関連ページ

広がるATOS

導入済み線区
 → 東海道貨物線
 → 武蔵野線

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ニュース
 → 【南武線】 西府駅が開業

フォーラム
 → 貨物線のいま/南武支線「小田踏切」の遮断時間
 → 「高架化」進む南武線、背景に「住民の強い要望」(1972年4月)
 → 南武支線と「特定都区市内」(1972年9月)
 → 「営団前踏切」に「ATOS.JB」
 → 【立川駅】日の当たる南武線ホーム(1988年8月)




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