2014/9/16(火) 新設

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新鶴見信号場−府中本町−西船橋間で導入済み

 武蔵野線では、2012年1月、新鶴見信号場−府中本町−西船橋間でATOSの導入が完了している。ただし、2003年度、既存のシステムと連動する電光掲示板および詳細な自動放送が各駅に整備され、ATOS導入済み線区に劣らない旅客案内が実現していた。ATOS導入とともに、折り返し設備を持つ新駅「吉川美南」が吉川−新三郷間に設置された。


新鶴見信号場−府中本町間は貨物線
梶ヶ谷貨物ターミナルを活用した南武線電車の折り返しも

 武蔵野線の新鶴見信号場−府中本町間は、通常、貨物列車のみが運行される貨物線で、旅客化されている府中本町−西船橋間と区別するため「武蔵野南線」と呼ばれることがある。途中に旅客駅がないだけでなく、JRの在来線では北陸トンネル(13,870m)、新清水トンネル(13,490m)、頸城トンネル(11,353m)に次いで長大な生田トンネル(10,359m)があり、臨時に旅客列車が運行される場合、トンネル内での長時間停車に備え、特急形や近郊形の車両が充当される。

 この区間には、梶ヶ谷貨物ターミナルがあり、新鶴見信号場(割畑信号場)からは東海道貨物線(新鶴見信号場−横浜羽沢−東戸塚)、高島貨物線(新鶴見信号場−桜木町)に直通できるほか、平面交差があるものの東海道線の旅客線(横浜方面)にも転線できる。また、新鶴見信号場−尻手間にも単線の短絡線があり、東海道貨物線からは、横須賀線(西大井方面)にも転線できる。

 貨物列車は、JR貨物が第二種鉄道事業者として運行している(※1)が、線路や信号は、この区間の第一種鉄道事業者であるJR東日本が管理している。貨物列車のほとんどは、武蔵野線と他の線区をまたがって運行されるため、ATOSが導入される意義はきわめて大きい。

※1 貨物列車については、鉄道貨物協会が発行する「貨物時刻表」が詳しい。

 一方、府中本町では、梶ヶ谷貨物ターミナル方面と北府中方面を直通する列車がホームに停車できない。また、武蔵野線の電車は引き上げ線を使わないと折り返しができない〔写真〕。

 南武線の電車は、逆に、府中本町では折り返しができない。2013年12月22日に行われた南武線の稲城長沼−府中本町間の高架化工事では、南武線の府中本町−立川間での折り返し運転に際し、府中本町に到着した上り電車を梶ヶ谷貨物ターミナルまで回送して折り返す措置がとられた。





(府中本町駅、2014/3 撮影)

 梶ヶ谷貨物ターミナルでの進路制御もATOSの管理下にある。JR貨物との調整や、臨時のダイヤの設定などが必要になるとはいえ、線路を閉鎖して逆線走行を行う場合とは異なり、システム上は通常の運行とまったく変わりがない。思わぬところで武蔵野線のATOSが活用された格好だ。

 2013年1月ごろから乗務員の習熟を目的とした試運転が入念に行なわれるなど、1回限りの運行にしては大がかりな態勢といえる。今後、異常時などに同様の折り返し運転を行うことが想定されているのではないかと考えられる。


府中本町−西船橋間の各駅に出発時機表示器

 府中本町−西船橋間の各駅では、出発時機表示器が設置された。配線が、従来の樹脂製カバーを開けて行なう方式から、ITVやレピーターと同様の金属製の継手に変更されている。横須賀線の北鎌倉−逗子間でも、同型の出発時機表示器が設置されている。



(武蔵浦和駅、2014/7 撮影)

 府中本町では、4番線には出発時機表示器が設置されていない。4番線からは、引き上げ線にしか進出できないためである。



(府中本町駅、2014/3 撮影)

既設の電光掲示板がATOSに連動

 武蔵野線の各駅では、2003年度、旅客案内の拡充策として電光掲示板が整備され、既設のPRCと連動する形で使用開始になっていた。ATOSへの切り換えでは、既設の電光掲示板はそのまま、LED表示の内容がATOSと連動する形になっている。



(武蔵浦和駅、2014/7 撮影)

 武蔵浦和では、ホームおよびコンコースに設置されていた武蔵野線の列車を案内する電光掲示板が、ATOSと連動する形に切り換えられた。







(武蔵浦和駅、2014/7 撮影)

一部の駅で1行タイプの電光掲示板

 府中本町、東所沢、一部の駅の上り線(府中本町方面)では、ホームに1行タイプの電光掲示板が設置されている〔写真〕。

 ATOSの導入に際して電光掲示板が設置されるケースでは、南武線での導入(2006年3月)からは2行タイプが設置されるようになっている。しかし、武蔵野線で電光掲示板の整備が行われたのはそれより前の2003年度である。



(東所沢駅、2014/7 撮影)

 当時は、行先が1種類しかない下り線などでは1行タイプの電光掲示板が設置されていた。1行タイプでは、スクロール表示や点滅表示に切り替わると発車時刻などの案内ができなくなるという問題がある。

 今後の運行体系の再編や、ATOSへの機能追加による表示情報の増加などによっては、2行タイプへの置き換えが必要となる箇所も出てくると考えられる。





(東所沢駅、2014/7 撮影)



(府中本町駅、2014/3 撮影)

「むさしの号」「しもうさ号」:現時点で速達性は限定的
信号改良含め、長期的な取り組みか

 武蔵野線では、2010年12月4日のダイヤ改正で、東北貨物線を経由して大宮に直通する「むさしの号」および「しもうさ号」が新設されている。

 「むさしの号」は、これまで運転されていた「快速むさしの号」「ホリデー快速むさしの号」を一本化し、武蔵野線内を各駅停車とした列車、「しもうさ号」は、「むさしの号」にあわせる形で新設される列車で、京葉線方面から大宮へ直通する。「快速むさしの号」「ホリデー快速むさしの号」は、2002年以降、115系車両(6両編成)で運転されてきたが、「むさしの号」「しもうさ号」は、武蔵野線の205系車両(8両編成)で運転される。

 ATOSが使用開始になった後の動きとしては、2013年3月のダイヤ改正で、平日日中の運転間隔を10分とする増発が行なわれ、2014年3月15日からは、八王子に直通する「むさしの号」が中央線内で各駅に停車しているが、2014年9月現在、「むさしの号」「しもうさ号」を含めた大幅なダイヤの変更は行なわれていない。

 「むさしの号」は、西浦和で分岐する短絡線、および短絡線と与野付近でつながる東北貨物線を経由し、大宮に乗り入れる。西浦和では、短絡線とつながる線路が駅西側で分岐しており、ホームには停車できない。このため、北朝霞−大宮間に停車駅はない。「しもうさ号」は、武蔵浦和の西側で分岐する短絡線を経由する。大宮では、ホームでの折り返しは行なわず、東大宮操車場に引き上げる。

 「むさしの号」での北朝霞−大宮間の所要時間は15分(2621M列車)である。一方、「しもうさ号」の武蔵浦和−大宮間は8分(2752M列車)で、同区間で途中に停車駅のない埼京線の通勤快速の7分(759S列車)と同程度である。また、北朝霞−武蔵浦和間は8分(751E列車)で、乗り換えにかかる時間を除くと、武蔵野線から埼京線に乗り継ぐ場合と所要時間は変わらない。「むさしの号」「しもうさ号」のいずれも、同区間での速達性は限定的なものとなっている。

 これは、「むさしの号」「しもうさ号」の運転開始に際し、従来の臨時列車で使用されてきた運転曲線をそのまま使用しているためとみられる。臨時列車では、旧型を含め多様な形式の車両が充当される可能性があるため、性能の低い車両に合わせた運転曲線としておくことが知られている。武蔵野線で使用される205系車両(8両編成)では、京葉線内の勾配などに対応するため電動車比率が高められているが、その性能が活かされない格好になっている。

 武蔵野線内では、従来の「快速むさしの号」「ホリデー快速むさしの号」では通過駅が設けられていたが、「むさしの号」「しもうさ号」では各駅停車となっている。府中本町方面行きの「むさしの号」では、中央線(快速)に直通する列車があるものの、西船橋方面行きの「しもうさ号」については、武蔵野線内ではほかの列車とまったく変わりがない。武蔵野線内での増発の意味合いが強く、運転本数がきわめて少ないことからも、直通運転の恩恵を受けることのできる利用客はきわめて限られる。

 そのような状況にもかかわらず運転が開始された背景には、営業運転を続けながら乗務員の習熟を進めるとともに、信号設備の改良なども行ない、ある時点で運転曲線を見直すといった、長期的な展望があるのではないかと考えられる。中央線(快速)でも、201系車両からE233系車両への置き換えに際し、運転曲線の見直しが期待されていたが、実際に見直されたのは、置き換え完了(2010年10月)の2年半後(2013年3月)である。信号設備の改良も行なわれ、最高速度が95km/hから100km/hに引き上げられている。なお、武蔵野線では2007年2月、市川大野でネットワーク信号制御システムが導入されている。

 一方、大宮以北では、宇都宮線(東北線)の概ね栗橋、高崎線の概ね鴻巣までの区間が東京50km圏に含まれ、近距離輸送(複々線区間での緩行線に相当する列車)の拡充が求められている。特に、高崎線の桶川−鴻巣間では、列車の本数を確保するため特別快速が各駅に停車し、この区間での速達性が損なわれている。複々線化や京浜東北線の延伸は考えにくいことから、大宮での乗り換えを前提とし、武蔵野線との直通によって近距離輸送に対応していくことも考えられる。湘南新宿ライン(2001年12月)も、最初は中距離列車の池袋乗り入れ(1988年3月)から始まっている。武蔵野線でも今後、広域での輸送体系再編に寄与する列車が設定されていくことが期待される。


10両化の予定なく、延伸ホームに「柵」
京葉線内で「短い8両編成」、ラッシュ時は遅れ原因にも

 北朝霞では、混雑緩和のため、ホームを10両編成相当の長さに延伸する工事が行なわれている。列車が停車しない位置では柵が設けられるため、10両編成の列車の停車には対応しない。北朝霞は、東武東上線の朝霞台との乗換駅であるため、もともと乗降客が多い上、ホームへのエスカレーター設置により、降車客のホーム上での滞留に拍車がかかっていた。埼玉新聞の報道によれば、同駅の混雑対策としてはこれまで、上下線の列車の発着時刻をずらすなどの措置をとってきたという。

 ホームが延伸されながらも柵が設けられることから、武蔵野線の電車の10両編成化や、ほかの線区からの10両編成の乗り入れが当分、予定されていないことがわかる。これには、北朝霞での混雑防止のため、この区間で増発ができないという旅客流動上の制約とともに、仮に快速運転を行なう場合、停車駅の候補となる、北朝霞と同様に私鉄との乗換駅である新秋津で、ホーム延伸が当分できないという事情も影響しているとみられる。

 新秋津では、西武池袋線の秋津との乗り換えの利便性が課題となっている。2002年には、「公共交通活性化総合プログラム」として、国土交通省関東運輸局、地元自治体(1都1県および3市)、地元商店会、JR東日本、西武鉄道、地元警察署による検討委員会が立ち上げられたが、現在は解散、商店会と鉄道事業者を除いた公的機関のみによる連絡会議が年1回の頻度で継続されている。両駅は、東村山市、清瀬市、所沢市の境にあり、新秋津は東村山市秋津町にあるものの、西武池袋線の秋津は北側の一部が所沢市、東側の約半分が清瀬市にまたがっている。東村山市側にある商店会が連絡通路の設置に反対してきた経緯などから、合意形成が難航している。仮に連絡通路(約180m)が設置される場合、ホーム北側にある跨線道を越えた位置に階段を設けるため、ホームが10両編成相当の長さに延伸されると見込まれる。連絡通路の有無でホーム構造物の設計が大きく左右されるため、結論が出ないうちはホーム延伸に着手できないことになる。

 一方、京葉線の東京方面への乗り入れでは、8両編成であることによって混雑率に偏りが生じ、遅れの原因になっているとされる。2013年3月のダイヤ改正では、朝ラッシュ時の武蔵野線から東京方面への直通列車がすべて各駅停車に変更されている。


新駅「吉川美南」が開業
ATOS導入と同時で手戻りなく

 武蔵野線の吉川−新三郷間では、2012年3月17日、新駅「吉川美南」が開業した。新駅には折り返し設備が設けられ、連動駅(構内にポイントのある駅)となることから、ATOSの導入と同時進行で新駅の工事が進められた。

 吉川美南で折り返しが可能となるまで、武蔵野線では、留置線や待避線を使わずに折り返し可能な駅は、電車区に隣接する東所沢に限られていた。深夜・早朝および異常時には南越谷での留置線を利用した折り返しが設定されているが、西船橋方面からの電車を折り返すには3回も進行方向を逆転する必要があり現実的でないため、南越谷での折り返しは府中本町方面からの電車に限られる。





(吉川美南駅、2014/7 撮影)

 吉川美南では、本線である1番線と3番線で2行タイプ、中線である2番線で1行タイプの電光掲示板が設置されている。現時点では、吉川美南で折り返し運転を行う定期列車は設定されていないが、多客時に吉川美南−西船橋間で増発される列車や、1日数本の列車が2番線を使用する。





(吉川美南駅、2014/7 撮影)

 吉川市のホームページによれば、新駅設置にかかった工事費用(折り返し設備を含む駅舎および自由通路)は最終的に約63億円となり、吉川市が約39億円、JR東日本が約25億円を負担した。武蔵野線へのATOS導入と同時の工事となったことから、ATOSの線区別ホストや、武蔵野線の他の駅の装置に関する費用は計上されていないと考えられ、JRの負担分には、新駅における中線およびポイント、電子連動装置の設置にかかる費用などが含まれているとみられる。このほかに、ICカード出改札システムの改修および運賃表の書き換えの費用として、約3億7000万円がかかっている。


関連ページ

広がるATOS

導入済み線区
 → 中央線(快速)・中央本線
 → 東海道貨物線
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導入予定線区
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ATOSの話題

ニュース
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 → 【府中市】「日本一JRの駅に近い史跡」2020年3月までに整備、事実上の駅前広場

フォーラム
 → 新八柱駅と「県道281号線」の地下横断歩道(1978年3月)
 → 【鴨川市】「さいたま副都心・安房鴨川間」の直通列車を要望(2014年10月)




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