2014/9/16(火) 新設

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青梅線(立川−青梅間)、
五日市線(拝島−武蔵五日市間の全線)に導入

 青梅線では、立川−青梅間、五日市線では、拝島−武蔵五日市間の全線でATOSの導入が予定されている。独立した線区別ホストは新設されず、中央線(快速)・中央本線の線区別ホストを更新の上、共用される見込みである。青梅線・五日市線ではCTCおよびPRCが導入済みで、各駅に電光掲示板および詳細な自動放送が導入されており、ATOS導入済み線区に劣らない自動旅客案内が既に実現している。

 青梅線・五日市線へのATOS導入は当初、計画されていなかったが、2010年9月、ATOSの導入対象線区が拡大され、両線区にも導入される予定となったことが明らかになった。ATOSの導入対象線区が拡大されるのは、2001年の埼京・川越線、2006年の横須賀線(大船−久里浜間)、武蔵野線に続き、3回目である。

 なお、青梅線・五日市線と関連の深い八高線についても、このページで説明する。


中央線の線区別ホスト、更新し青梅線でも使用
青梅線での導入スケジュールは不透明

 青梅線・五日市線では、CTCセンター所在駅である拝島に指令が置かれている。拝島では、2006年11月19日に電子連動化され、PRC機能も導入されている。拝島では、八高線の八王子−高麗川間も管轄している。このため、川越線のATOSは武蔵高萩までが対象となっている。

 PRCの更新時期は、導入後15年程度とされており、青梅線・五日市線では遅くとも2021年までに、既設PRCからATOSへの切り換えが行なわれることになる。ただし、JR East Technical Review(2011年)によれば、青梅線・五日市線では、「中央線」と同一の線区別ホスト(線区中央装置)を使用することとし、青梅線・五日市線でのATOS導入は、中央線のATOSを更新する一連の作業と並行して進められるという。中央線(快速および各駅停車、中央本線)では、ATOSが導入後15年となることから、2013年度中に更新を完了する予定とされていたが、2014年9月現在、完了しているかは不明(※1)である。ATOSの線区別ホストが全面的に更新されるのは初めてで、1998年2月4日には、中央線の線区別ホストと山手線・京浜東北線の線区別ホストを接続する試験中、各駅での進路制御ができなくなるトラブルも発生している(※2)。入念に検証しながら更新が進められているものとみられる。

※1 南武線以降で採用された、電光掲示板で次列車の接近状況を図示する機能が、中央線(各駅停車)を含め、一部の駅で導入されている。三鷹−立川間で高架化された駅では、駅装置の更新が完了しているとみられる。
※2 後に、このトラブルの直接の原因は猿橋での通信機器の故障だったと公表されている。

 拝島で、PRCの更新時期となる2021年を待たずにPRCがATOSに置き換えられることになった場合、電子連動装置についてはATOSへの切り換え後も同一の装置が使用されるため問題ない。PRCを構成する汎用的な装置(サーバ、端末、ネットワーク機器など)については、契約内容は公表されていないが一般的に、期間途中での使用中止は問題なく行なえるものとみられる。なお、更新時期を超過しての使用継続は、一般的に、機器の製造中止による枯渇(※2)、保守契約の終了により、原則できない。このため、青梅線でのATOS導入よりも、中央線でのATOS更新のほうが優先度が高い。仮に中央線でのATOS更新が遅れているとすると、青梅線でのATOS導入はさらに後回しになるとみられる。また、このような事態にも対応できるよう、拝島でのPRCの更新時期に余裕を持たせてあるともいえる。

※2 JR East Technical Review(2011年)では、枯渇機器の一例としてアナログモデムが挙げられている。2014年9月現在、アナログモデムの市販は継続されているが、ATOSの装置やJR電話などとの接続性を検証済みの特定の機種が製造中止になったという意味で言及されているとみられる。一般に、市販品での代用は行なわれない。

 青梅線では、青梅でホームを増設し2面3線化する工事が予定されている。2014年8月22日、JR東日本八王子支社が発表した。2014年9月に着工、2017年春ごろ完成予定としている。当面の導入予定が立川−青梅間とされているのは、青梅での配線の変更にかかる手戻りを避けるためとみられ、青梅線・五日市線でのATOS導入は、この工事の進捗を待たずに進められるものとみられる。ホーム増設工事の完了後には、青梅−奥多摩間にもATOSが拡大される可能性がある。


全線で出発時機表示器設置か
E233系車両に通告伝達システムも

 青梅線・五日市線でATOSの導入が予定されている区間は、東京50km圏に概ね含まれるため、導入予定の区間すべてで出発時機表示器が設置されるものとみられる。ただし、青梅線では、4両、6両、10両と、同一のホームに最大で3種類の編成長の列車が停車する可能性がある。すべての列車を出発時機表示器の対象とする場合、設置箇所が多くなるため、何らかの方法で設置箇所を削減するものとみられる。

 具体的には、列車番号の末尾がTとなる、中央線直通列車(原則として10両)に限って出発時機表示器の対象とするケースと、この区間の列車すべてを出発時機表示器の対象外とするケースとが考えられる。前者では、中央線(快速)との直通運転をこれまで以上に重視することになり、異常時の青梅特快の取り扱いなどが見直されることも考えられる。後者では、異常時にはこれまで同様、青梅線と中央線(快速)の運転を切り離し、青梅線・五日市線内での折り返し運転を重視することが考えられる。

 一方、青梅線・五日市線では、中央線(快速)とともに、201系車両のE233系車両への置き換えが完了している〔写真〕。新型車両では、デジタル列車無線のデータ通信および運転台のモニタを活用した、通告伝達システムが使用可能となっている。

 通告伝達システムでは、在線位置にかかわらずいつでも伝達が可能で、乗務員による受領確認が行なえるなど、出発時機表示器に対する優位性がある。これは、青梅線・五日市線とともにATOS導入の対象となった横浜線、京葉線についてもいえることである。



(西立川駅、2014/7 撮影)

 出発時機表示器の設置によって、かえって柔軟性が損なわれることがあっては本末転倒である。現に、京浜東北・根岸線に直通する横浜線の電車や、武蔵野線と中央線(快速)を直通する「むさしの号」は、直通先の線区では対応する位置に出発時機表示器がなく、出発時機表示器の対象外となる特急列車や臨時列車などと同等の取り扱いとなっており、異常時には直通が中止される。車両側の設備の活用による、すべての列車をきめ細かく管理できる環境の実現が期待される。今後、最初にATOSが導入される線区での動向が注目される。


拝島:電光掲示板がPRCに連動、
五日市線の案内に工夫

 拝島から発車する五日市線の下り列車は、立川方面からの直通列車と、拝島で折り返す列車とで、のりばが異なる。拝島の2番線には、武蔵五日市行き列車の発車時刻とのりばを案内する全角4文字分のLED表示面が追加された電光掲示板が設置されている〔写真〕。



(拝島駅、2014/7 撮影)

 3番線には通常の2行タイプの電光掲示板が設置されているが、最下部の掲出高さが揃えられているため、同種の情報が水平に並ばなくなっている。また、多くの駅では2台の電光掲示板を左右に配置し、中央に時計を設置するのが一般的であるが、2番線の電光掲示板より線路側に時計が設置されている。

 拝島の電光掲示板はいずれも、ATOS導入直前の津田沼、品川などと同じ書体での表示となっている。









(拝島駅、2014/7 撮影)

立川−西立川間に「青梅短絡線」
中央線との直通、線区別ホスト共用でスムーズに

 青梅線の立川−西立川間では、複線の線路に加え、単線の「青梅短絡線」が設けられている〔上動画(30秒)〕。青梅短絡線は、立川−日野間の中央線と立体交差になっており、中央線および南武線から青梅線へ直通する下り列車〔下動画(30秒)〕、および、青梅線から南武線へ直通する上り列車が短絡線を経由して運転される。

 しかし、西立川では、短絡線から入線する下り列車の接近を知らせる自動放送が、列車のホームへの進入の直前まで流れないという問題がある。青梅短絡線の進路制御は中央線側で行なわれているとみられ、西立川の駅装置では、下り列車が西立川の場内信号機に進入するまで、在線を検知できないのではないかと考えられる。青梅短絡線は単線自動閉そく式で、単線区間の途中にも閉そく信号機が設けられていることから、中央線と同一の線区別ホストを使用する形での青梅線へのATOS導入により、この問題が解消できるとみられる。





(西立川駅、2014/7 撮影)

 一方、青梅線から中央線へ直通する上り列車について、立川での進路制御には、青梅線側のPRCが把握する上り列車の在線位置が、中央線側のATOSに伝達される必要がある。

 現状では、青梅線から中央線へ直通する上り列車で、西立川で数分停車する列車がある。情報の伝達に何らかの人的対応を要しているとは考えにくいが、停車時間の長さがシステム上の都合によるものである可能性がある。





(西立川駅、2014/7 撮影)

 さらに、これはシステム以前の制約であるが、立川の手前で分岐器による35km/hの速度制限を受けるほか、3番線のホーム中間に追加の場内信号機がなく、先行列車がわずかに遅れるだけでも場内信号機の手前で一旦停止することになるため、西立川での停車時間の長さも含め、立川までの所要時間が長くなる列車が生じている。中央線でのATOS更新および青梅線へのATOS導入により、両線の列車の在線位置がシームレスに把握できるようになるとともに、西立川および日野の双方で上り列車に適切な延発を指示することができるようになれば、この区間での運行が多少はスムーズになると期待される。とはいえ、システムや運用での改善には限界があり、抜本的には線路や信号設備の改良が待たれる。

 青梅線の立川−東中神間では連続立体交差化が予定されている(※3)。この工事が始まるまで、この区間で線路や信号設備が改良されることは期待できない。西立川では、ホーム上屋の延伸も行なわれないままである〔写真〕。



(西立川駅、2014/7 撮影)

※3 2004年6月に東京都都市整備局が公表した「踏切対策基本方針」で、「鉄道立体化の検討対象区間」として、南武線の矢川−立川間、青梅線の立川−東中神間が挙げられている。立川の配線が決定しない限り、事業化されないとみられる。立川市の構想では、複線の青梅線および単線の青梅短絡線の計3線の「高架化」(意図としては「踏切の除却」であり、線路構造は未定とみられる)を目指すとされている。また、中央線の三鷹−立川間の複々線化が事業化されているが、未着工である。


八高線でPRC導入済み
長期的にはATOSへ切り換えか

 八高線は、1996年3月に八王子−高麗川間が電化され、現在、川越線(川越−高麗川間)と直通運転を行なっている。

 八高線では、八王子−高麗川間の全駅で列車の行き違いが可能であるが、直通している川越線内では、笠幡および西川越で行き違いができない。このため、全駅で行き違いを行なう「ネットダイヤ」にはなっておらず、八高線側では設備上の輸送能力を活かしきれていない状態である。

 北八王子では、改札口のみに電光掲示板が設置され、ホームには設置されていない。自動放送では、行先などの詳細な案内が行なわれない〔動画(30秒)〕。



(北八王子駅、2014/7 撮影)

 駅周辺に工場や宅地が広がり、乗車人員は八高線で最も多いが1万人を超えておらず、バリアフリー設備としてはエレベーターのみの設置となっている〔写真〕。日中の列車あたりの乗降客は数人であるが、乗換駅の間を乗り通す利用客は比較的多く、列車そのものは日中でも座席が半分以上埋まる状況になっている。



(北八王子駅、2014/7 撮影)

 八高線のCTCも拝島に置かれ、PRCが導入済みである。川越−武蔵高萩間でATOS導入済み、拝島では青梅線の駅としてATOSへの切り換えが予定される中、八王子−高麗川間(拝島を除く)が取り残される。ATOSの導入には、現地のCTCセンターに置かれた指令を東京に一元化する目的もあることから、拝島に八高線の指令だけを残すことは考えにくい。

 青梅線・五日市線へのATOS導入では、独立した線区別ホストが新設されず、中央線と同一の線区別ホストが使用される見通しであることから、八高線についても、仮にPRCからATOSへ切り換える場合、中央線または川越線と同一の線区別ホストを使用する措置が取られると考えられる。

 長期的には、高麗川や、八王子での貨物関連を含む配線の整理、川越線での行き違い設備の増設、箱根ケ崎電車区(仮称)の設置、青梅線および南武線の連続立体交差化などと合わせて取り組まれるものとみられる。すなわち、連動装置の改修が必要とならない限り、旅客案内装置やダイヤに大きな変更が加えられることは原則ないといえる。

 なお、八王子−高麗川間では、2001年度にATS-Pが導入されている。ATS-Pの導入時期として遅いものではなく、十分な投資が適切な時期に、八高線でも行なわれてきていることを示している。



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